卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

セルゼヴィアD&D外伝シナリオ「混沌の戦士(仮称)」

 さて、今回のセッションはセルゼヴィアワールドのメインデザイナーの一人である村岡先輩の手による、「ミニシナリオ」である。
 ここで注釈。
 セルゼヴィアワールドとは何か、
 それは新和版のD&Dに、ガゼッタなどの追加ルールを混入し、更にAD&Dの1stなどから呪文、クラスを導入した一味違う贅沢なD&Dとそのハウスルールを生かした背景世界である。詳しくはコミケ等でSelzevia World Supportと言うサークル名に注目していただければいい。使用しているハウスルール他ワールドセッティングなどを発行している。
 以上、営業終わり。本音行こう。
 D&Dシリーズの中で唯一スマッシュと言う馬鹿ルールがあるClassicD&Dの派手さ、豪快さを世界の基本としつつクラス間の調整を図り、バランスを取ってしまった世界である。更にそれに、その折々のプレイヤーの趣味が反映尾されている為に、村正の基本ダメージは5d10だったり、スペルユーザーはダメージを受けても呪文を完遂したり、パソコンゲーム初期のモンスターが多くて新人はモトネタが解らなかったり、ハイエンシェント呪文に某バスタードの呪文が導入されていたりといった気持ちいい世界である。
 ここ数年はD16が「王子戦争」というキャンペーンを行っているが、今回はそのキャンペーンの間の挿話と言う形でミニシナリオであり、D16はプレイヤーとして参加した。また、TN氏も参加して五人パーティとなった。以下はその構成。
 パラディン
 メインバトルタンク。特にセルゼヴィアオリジナル呪文のDefence系呪文を併用しACをかなり下げることが可能。
 先日ようやくノーマルソードのウェポンマスタリーをベーシックからスキルドに向上し、デフレクトが可能になり更に硬くなった感あり。今回はセルゼヴィアワールドのユニークアイテムHoly Avenger(周囲に使い手と同レベル強度のDispel Magicオーラを照射。選択能力あり)をイベントで神殿に預けての参戦。
 地獄の悪魔に命を狙われており、パラディンの本懐と嘯く。
 マジックユーザー
 キャンペーン参戦は遅かったものの、この世界のワールドデザイナーなのでバランスは解っており、いろいろとクリティカルなところで呪文を決めてくれ、マスターを泣かせる。
 攻撃呪文も容赦ないけどそれ以上に探索系呪文のセレクトが渋い。
 シーフ
 速射砲。スキル併用により、早撃ちと速射でシーフとは思えないダメージを射込む。今回の舞台となったサイクラーム城市エンブリオのギルドマスター。
 以上がキャンペーンレギュラーメンバー
 二刀流ファイター
 マイキャラ。攻撃力過剰を目指し、ノーマルソード二刀流キャラ。お世辞にもACは低くない。とにかく速く敵のHPを削ることが生き延びる道。
 クレリック
 TN氏のキャラクター。セルゼヴィアは確か二回目。セルゼヴィアワールド準拠の呪文の取り方に苦労してたみたい。けれど、TrueSightの使いどころはかなり適切だったと思う。  平均レベルは19〜20と言ったところ。

 シナリオのあらすじを駆け足で説明。
 戦火が一息ついたように思えるサイクラーム城市エンブリオ。レギュラーキャラは戦に備えた準備をしている中、戦意高揚を兼ねた戦技トーナメントが行われる。傭兵部隊からは二刀流ファイター、騎士団からは女騎士が勝ち残り、大いに沸かせる。一方、大陸のもう片端に位置する太陽神サンティオンの大神殿から派遣されたクレリックは対パクドラ教国(暗黒神バルマイドを国教とする国家現在サイクラーム他の諸国と交戦中)の焦点具としてHoly Avengerを大神殿に一旦返却する旨をパラディンに伝える。
 それからしばらくして、エンブリオの宝物室からとある青い宝石のあしらわれたネックレスが奪われる事件が起きる。
 盗んだのはトーナメントを勝ち残った女騎士。その手伝いを同じく王国騎士団の一人がしたらしい。
 そのネックレスには特にエンチャントも施されておらず、通常の宝物として保管されていた。
 ところが、そのネックレス、本体には何のエンチャントメントも施されていなかったが、サイクラーム首都近くの古墳(以前にそこを経由してパクドラのコマンドがデビルを派遣したところ)において何らかの鍵になると言うものだったらしい。
 慌てて、即席パーティを編成しその古墳に向かう。道々解るのはその古墳が巨悪を封じたもので五人のマジックユーザーが共同して封印したと言うこと。
 古墳は年月により半ば土砂に埋まった形。入り口前の石塔が全部壊されてるあたり嫌げ。ピラミッド状の入り口及び周囲には魔法のオーラが満ちておりディテクトマジックが塗りつぶされてる状況。
 入り口をファインドトラップ。特に無し。けどいやな感じがするので入り口をセルゼヴィア呪文のストーンウォリアーでストーンウォリアーを召喚し、開けさせる。とたんにアイスストームが起こる。ダメージは聞かなくても解るどうせ20d6に決まってる。コンテンジェンシィによる受動トラップ。おそらくは古墳を封印した者たによるものと判断。首飾りを持たない侵入者とでも発動キーをかけたに違いない。
 この時点でクレリックが早くもトゥルーサイトを使用する決意を固める。特に異存は無く(セルゼヴィア設定ではトゥルーサイトの強力な効果に対し、使用は月に一度までという制限を課しているので使いどころは難しい。その代わり、このトゥルーサイトは対象の情報全てがわかるので他のセッティングに比べれば強力)、更にトラベルを併用し全員が移動。場合によってはイセリアル空間側からダンジョンを突破する構え。
 
#このレベルになると通常の石組みダンジョンなら、場合によってはイセリアルから回廊とは関係なしに侵入、突破して行くのがセルゼヴィア高レベルの味。
 地下に向け長く伸びる回廊にはそこかしこに凶悪な罠が在ったらしいがトゥルーサイトにより看破。時間を稼ぐことができ胸を撫で下ろす。
 地下の玄室と思ったところはエントランスめいていて正面に両開きの扉。片方は白の扉、もう片方は黒。
 PC達はこの時点で首飾りとこの古墳の住人について伝承を知っていたので、おそらくこの奥が玄室と考えるが、中に入る手段が今の所無い。イセリアル侵入は鉛か同等の手段により遮られ、おそらくテレポートも不可。仮にテレポートできたとしても送り込める人数では予想される事態に対応できない。正面の扉には鍵穴があり更に、強力な魔法の要素も感知できる。従って鍵を探すことにする。
 幸いトゥルーサイトがまだ続いていたので難なくシークレットドアを二つ探し出す。
 一つは彫像と連動するタイプ。もう一つは素のままで隠してあったもの。ここでどちらから侵入すべきかしばし議論。彫像とリンクしている方が見つけやすい以上、こちら側はフェイクと言う考えと彫像に何らかの意味があるとしたらそれに乗って見るべきと言う考えの対立。
 ええと、結局最初は彫像とリンクした方をいったハズ。通路には昔懐かしいゼラチナスキューブがいたりして少し懐古する。で、ぶちる。
 途中のメカニカルトラップの類は先行するストーンウォリアーがかかるもののエンチャントモンスターなのでたいていは大丈夫。
 やがて侵入した部屋には中央にフォースフィールドの球体ががあり、その中になにやら原生動物めいたものがうごめいている。奥には扉がある。
 ストーンウォリアーを先行させて奥の扉を開けさせる。だって扉の両隣に怪しげな彫像が立ってるし。
 案の定両側の彫像は動いて加速装置がついてるような動きでストーンウォリアーを殴り始める。この時点でD16の脳裏にはいやな記憶が……。
 おそらく、マジックユーザーをプレイしていたはむぞう氏も同様のことを思ったに違いないが、スキルチェックに失敗しその彫像がいかなる種類のゴーレムかを判別は出来なかった。
 俺の記憶が確かならば、モンスターマニュアルにて追加されたオフィシャルモンスター(つまりぶちきれているのだ、強さが)シルバーゴーレム、自動的にイニシアチブを取り、両の腕で二回ずつ殴り、更にはいくつかの呪文を無効化する。……なんてことはプレイヤーが知っててもPCは知らない。
 二体も出すなよぉ、先行しているのがPCであったらちょっとした危機である。
 同時にフォースフィールドが解け、中からジャイアントアメーバが出てくる。これにより、奥への視界が遮られる。
 呪文を併用して何とか撃退。タコ殴りにされたストーンウォリアーはこの辺で土に返ったかしたはず。
 更に奥に進むと同じくフォースフィールドに包まれて黒く、手が六本で、悪魔のような姿をしたモンスターがうずくまっている。いきり立つパラディンを抑えここで作戦会議。モンスターはセルゼヴィアオリジナルモンスターブラックテラー。かなり嫌なモンスターだ。最も先ほど同様にPCはんな事知らない。
 戦力をかなり消耗することが予想される為に、ここで別の方のルートをひとまず洗っておこうと決定。このときにはまだストーンウォリアー残ってのかもしれない。これをプローブ代わりにしようと考えてたわけだ。
 もう一方のルートには、ファイアーエレメンタル。多分通常のコンジュアエレメンタルで呼び出したんじゃなく、エレメンタルプレーンネイティブなオーバー16HDな奴。パーマネンスしたファイヤーウォールを拠点に数対いた模様。ディスペルマジックでファイヤーウォールを潰すと火の供給が無くなり消えた。まともに殴り合ってなんかいられない。
 その奥に行くと再びフォースフィールドの中に囚われた、二体の肌の無い水死体のようなケンタウロス状の生き物。
 マジッすか、ナックラビーが二対ですか、あの人たちブレス吹く上に即死毒持ちでフィアオーラ回りに撒き散らすはず。
 ここでも、正体をしるPCはおらず、剣呑な相手とのみ認識。いや間違ってはいないが、剣呑なんてモノじゃないっす。
 確か、バリヤーで囲んで外から殴ろうとしたとき、フォーズフィールドが解けた(ちょっと記憶あいまい)。で、その解除方法と言うのがコンテンジェンシィディスペルマジックだったわけでエリア内にいた数人のエンチャントが剥げる。痛い。
 幸い、ブレスの十字砲火は食らわずにすみ、更に対毒STにも前線は成功して殴る。
 この時点で気がついても良かったはずなのだけれど、後まで気がつかなったことがあった。
 それはこのダンジョンのモンスター配置による謎。
 基本的にこれらはマジックユーザーによるオフィシャル呪文のスペルコンボで構成されており、そして、手前側の部屋にはどちらかと言えばニュートラルなコンストラクト、コンジュア系のモンスターがあり、その奥にエビルなしかし、エクストラプラナーではないモンスターが囚われていると言う事。
 つまり、奥のモンスターは元からいたものをトラップとして応用し、手前側は封印したマジックユーザーたちの自前であろうと言うことだ。
 これが解るとコンティンジェンシィディスペルマジックの仕組みがもう少しよくわかったかも。
 パーティの戦力は70%疲労といったところか。まだ、ヘイストが残っているので押し切れるかも知れず。
 更に奥の部屋には白の鍵が在った。もちろんトラップその他も在ったが割愛。
 最前の部屋に戻りブラックテラーを撃破。フォースフィールドを解くイニシャチブまではこちらが取れたが、開放された直後は相手に取られ、ちょっと焦ったが幸いなことにダメージを受けただけですんだ。つまり、誰も死ななかったし、石にもならなかったしってこと。最もシーフが残りヒットポイント10台で「もう戦闘はしないからねー」という。
 鍵を手に入れて正門を開ける。
 中は玄室ではいった途端に異様な寒気が襲う。
 奥の祭壇ではサイクラームの女騎士とその連れ、及び(予想はしてたけど)パクドラのコマンドクレリック。中央にはダークエルフたちが四体ほど転がっている。そういえば、盗難事件のときにこいつらが逃走を助けたって言うの忘れてた。
 そして、中央には巨大な黒い巨人。

 パラディンが叫ぶ。
「ナイトウォーカー!!」
 恐ろしさを知りたい方はマスターズルールブック(黒本)のモンスターデータをご覧下さい。拳打撃だけでも4d10ダメージで更には即死毒ほか力一杯特殊能力のオンパレードである。はっきりいって、今のままでは勝てない。入る前にヘイストをかけていたのが救いと言えば救い。
 イニシァチブはシーフ、ファイターが先制、敵、他メンバーだったと思う。パラディンがナイトウォーカーの足を止める為に前に出る。シーフがクレリックにサイレンスをシーフ自身にかけるように指示。それを待ってシーフはもっていたマジックアイテム(スリングストーンであたった相手を強制的にデイメンジョンドアするPC達は自分で使っていた)によりディメンジョンドアで祭壇近くに出る。これにより祭壇でのスペルを封じる。ファイターがクレリックに近づき二刀流とヘイストで切りまくる。
 恐るべきナイトウォーカーの拳。パラディンの体が大きく揺れる。何とか耐える。
 次ラウンド、ナイトウォーカーが取った。更にもう二撃、限界が近い。
 シーフがピックポケットに成功しネックレスを奪い取る。ナイトウォーカーは自分のいたところに戻ってゆく。ふぃー。
   で、あとは女騎士とのやり取り、脅迫だったかチャームかされたよう。
 伝説その他から総合して、この場所に封印されていた混沌の騎士、AD&D的に言うならデスナイトかな。で、ないとウォーカーその他はそいつらの食客だったらしい。
 封印はやや解けたので、出る可能性がある。全員でd20を振って足した数がマスターのいう難易度(かかった時間から適当に設定)以下であればいいという。いっせいで振る。全員の目がパラディンのダイスに注がれる。きっちり1を出してくれている。
「この戦闘馬鹿がー」
「こんなときくらいパラディンの意地に目つぶってよー」
 等々、文句を言われつつ全員で準備。
 完全待ち構え、当然ヘイスト済みなのでおそらく瞬殺できると踏んだ。が、それでもひどい目にあった。
 誰かに頼んでディメンジョンドアをコンティンジェンシィしてもらってたカオスナイトは必殺の1ラウンドの攻撃を回避し、まとまったPC前衛に対しセルゼヴィアバトルアックス奥義SONIC BLASTが炸裂。
 まとめて前衛のHPが削れた上、げっ!バトルアックスの副効果によるスタンチェックなんで前衛みんなこけるかな。ディレイもしてるしこのままだと次のラウンドは相手に先に殴られる。
 同じ一撃がもう一回きたなら耐え切れない。
 炸裂する攻撃呪文。そして、秘蔵のアロー+4で必死の射撃を行うシーフ。ヘイストと速射の併用でラウンド四発の射撃。命中、甚大なダメージ。
 マスターの顔を見る。首を振った。
 まだ立ってやがる。落とせなかったのだ。
「人外の速さを見せてやる!」
 後衛からシーフが早撃ちのスキルを使用して、イニシャチブを出す。取った。
 さらに突き立つ数本の矢。
 ようやく混沌の戦士の体が薄れて消えた。
 
感想
 以前から村岡先輩のプレイスタイルを見ていて感じていたことを改めて実感した。
 村岡先輩のスタイルは基本的にゲームのシステムに従順で、ルール中で再現可能なフィーチャーによって几帳面にエンカウンターを組み立てて行くスタイルである。と思う。
 これは、D&Dを遊び抜いた人が、D&Dを遊び抜いた人に対して双方の一定の知識を前提にした上でなおかつ、システムや世界観を知らない人にも興奮をもたらせるスタイルだと思う。知ってる人はメタゲームとして、知らない人は純粋にエンカウンターのピリピリ来るバランスによって。
 シナリオ自体は非常に簡単な作りで、ダンジョンの構造そのものにも見るべき所はない。しかし、個々の部屋に配置されたエンカウンターは熟慮を要するし、その結果シナリオの全体が見える作りになっている。
 憎いくらいに正統派だなと思う。
 ご本人は導入部やNPCについて不満があったようだが、一回のセッションではそうしたストーリーテリング要素の方までカバーするのは難しいのではないだろうか。明らかにプレイヤーの興味はダンジョンの構成とサバイバルに向いており、またマスタリングの重点もダンジョンにあるように感じられた。
 しかし、こうしたスタイルであるなら、そして単発であるなら、このようにどちらか片方に力が入ったマスタリング、シナリオでいいのではないだろうか。
 自分が同様のものをマスタリングするなら、前半ダンジョンにはいるまでをサスペンスタッチで伸ばして一回とし、決戦に至るまでの伏線、謎解きの前提条件を出し尽くし、二回目でダンジョンサバイバルに専念して貰う。二回目の中で一回目の伏線が判明すると言う方法の方が望ましいと思う。
 単発ものとしては、明らかにダンジョンの方を優先すべきで、実際に面白い上に刺激になったセッションだった。