卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

とりあえずメモ

 思いついたことをとりあえずメモっておきます。
 夢の中で思いついたんで急がないとね。
「(中略)
 古来より、女装そして男装はわれわれ日本人の芸能において不可欠の要素でした。
 神話の昔にはヤマトタケルがクマソを打つために己が身を女性と偽りました。
 時を下れば平家物語のなか、栄枯盛衰のうつしかがみとなったのは男装の舞姫、白拍子の祇王であります。
 その後も里見八犬伝の犬坂毛野胤智、東洋のマタ・ハリ川島芳子。
 はっきり言いましょう。
 日本はトランスジェンダー、異性装の王国なのです!
 コスプレがなんだ、オカマがなんだ、オナベがどうした。
 美しければ良いじゃないカッ。
 みんなそう考えていたんでしょう?違いますカッ。
 その思いが今ここに結実!
 霞城市男子校の名門影南高校の「姫」そして、同じく灯火女子高の「王子」幾多もの伝統を越え、
 今、
 ここに、
 ついに、ついに競演で登場だアアッ。

 ……なお実況は霞城三高放送部、“内角高目をファウルチップ”福沢が勤めさせていただきます。そして解説は“とりあえずツッコミ系弟三代目”天童さんにお願いします」
「お願いします」
「さて、アナウンスがすみ、ついにテーマが流れてきました。
 おーっと、この流麗な音楽はまさか、まさかっ!
ベルサイユのばら』だぁーッ!まさしく異性装劇の金字塔、フランス革命を舞台に男装の麗人オスカルと恋人アンドレの悲恋を美しく、そして流麗に描いた大傑作です。
 ということはですね、解説の天童さん。灯火女子の「王子」がアンドレ、影南の姫がオスカルといったところでしょうか?」
「いや、それでは両方とも男装となりますね。おそらく、おそらくは影南高校の姫はマリーアントワネットだと思うのですが……。いや、待ってくださいよ?これは、双方共に男装です!マリーアントワネットではない」
「たった今確認しました!そのようですオスカルとアンドレ、オスカルとアンドレです!しかし、これでは影南の姫は男装。男が男装していることに……」
「あああぁーっ!」
「どうしました解説の天童さん!」
「アレを、アレを見るんです。オスカルの立ち居振る舞いをっ!」
「……おおっ、あれは?」
「そうです。アレは『男装の麗人』の動きです、振舞い方です。「姫」と「王子」は私たちの予想をさらに上回ったのですよ」
「ちょ、ちょっとお待ちください。実況の私が戸惑っております」
「つまりですね、福沢さん。影南の「姫」は今まで女装により「姫」といわれておりました。しかし、今回このイベントに際して「姫」はさらにもう一ひねり「姫」による男装の麗人を持ってきたんですよ」
「それは、つまり、やはり男が男をするということではないんですか?」
「それは見ていただければわかるでしょう。ほら、歩き方の美しさですが、同じく男装の灯火女子のアンドレよりも狭く、細やかなのがわかりますか」
「あ、あーっ!!!」
「お分かりになりましたね。そのとおりです。影南の「姫」は男性であるにもかかわらず、「姫」として女性になりきり、そして再び男装の麗人に戻ってきたのですよ!」
「こ、これはなんと申していいのでしょう。放送部を志しおよそ実況を道と決めた私にとってこれほどに屈辱的なことがあるでしょうか。私にはいま、この「姫」の美しさ気高さそして優美さを語る言葉がありません。」
「いや、これは大変ですよ。ここまでの捻りを加えた『美しさ』を語る言葉は想定されていませんからね」
「放送をお聞きの皆さん、この歓声が届くでしょうか。この歓声こそ、放送人の私、そして放送部のKOカウントであります。事実を伝えるべき放送部がただ、『姫』の美しさの前に敗れ去ったのです。
 聞こえますか皆さん、ここ霞城三高に降り立ったのは耽美と背徳の二重螺旋、ジェンダーのウルトラハイブリッド、セントラルドグマを越えたまさしくDNAの美しく甘い嘘であります」
「いや、まさにこれはカウンターですね。男性である女性によって為された男装の麗人ですから」
「そう、まさにこれはジェンダーのトリプルクロスカウンター、食らった僕らはウルフ金串
もはや一般人としては再起不能!
 熱き心はBurning Up!、切ない恋しさGrowing Up!
 もはや燃えていいのか萌えたらいいのかわからない有様です」
「いやー、これは危険ですね、レフェリー止めないとまずいですよ。観客から再起不能になる人間が出ないといいですけどねぇ」