卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

クトゥルフの呼び声・2/12の質問返答

 id:Nacky7さんからさらに質問をいただいたので、連休明け自宅に戻り本棚をひっくり返して「クトゥルフの呼び声」(Call of Cthuluhu:CoC)のシナリオを読む。
 さて、Nacky7さんからの質問は次のようなもの。

D16:『具体例としては「クトゥルフの呼び声」の幾つかのシナリオが適当ではないでしょうか』
Nacky7さん:『さらに具体的にシナリオのタイトルを挙げてもらえませんか? 今手元にR&RのVol.10号があるのですが、これに掲載されているCoCのシナリオ「もっと食べたい」はD16さんのおっしゃる“シナリオ”なのでしょうか? R&Rをお持ちでないなら、他の作品でもかまいません。CoCのシナリオなら、だいたい分かると思います。』

 R&Rを持っていないので手元のCoCのシナリオで。持っていない人には何のことやらわからんと思いますがご容赦。
 さて、D16が言ったのは以下のようなこと。

一方。シナリオの要素はPCが巻き込まれる、または飛び込んでいく「事件」の説明、解説と考えます。これの具体例としては「クトゥルフの呼び声」の幾つかのシナリオが適当ではないでしょうか。PCは基本的に「場所」で「何か、誰か」に遭遇するのではなく、「場所、何か、アクション」が一体となった「事件」に遭遇します。

 ではこのD16の考えに合致するCoCのシナリオですが、キャンペーンシナリオ『ヨグ=ソトースの影』の第6章、第7章。そして、『ニャルラトテップの仮面』特に第3章、第4章です。(とりあえずD16が持っていた中では)
 その前に、基本の箱セットに入っていたシナリオブックレットに載っているシナリオ、特に入門用シナリオ(『幽霊屋敷』、『狂人の丘』、『ブロックフォード館』)について述べると。これらはかなりアドベンチャー、特に「土地型のシナリオ(Site Based Adventure)」に近い構成です。しかし、それもこのシナリオブックレットの後ろに控えている『カストロネグロの秘密』あたりになると若干変わってきます。
 具体的に言うと、シナリオ中でのNPCや場所の説明において、遭遇の説明が「PCの行動を」込みにして説明されるようになっていると思うのです。
 例を挙げます。D&DのアドベンチャーであればNPCについての説明は、

  • NPCのデータ(数値データ、所持品)
  • NPCが知っている、知りうる情報
  • そのNPCと他のNPC、環境とのかかわり
  • 行動の指針

 などが説明されていますが、一方CoCでは、上記データの他に加えてそのNPCとの“遭遇”そのものの説明がなされていることが多いようです。そして、そのなかにルール的な判定の処理、結果さらにはそのNPCに用意された事件が含まれています。
 刊行されたシナリオでは、CoCのNPCとの遭遇はD&Dのそれに比べてメタな要素に及ぶ記述を多く含んでいるといえると思います。D&Dだって、「事件型のシナリオ(Event Based Adventure)」であればほぼ同様のつくりとなっているハズなのです。が、やはりCoCのほうが記述が手厚い感があります。
 このような、(ほぼ同じに見える)シナリオで説明されている遭遇の違いを指摘した上で、先ほどの『ヨグ=ソトースの影』の第6章、第7章。そして、『ニャルラトテップの仮面』特に第3章、第4章の特徴を挙げると……、以下ネタばれを含むのでマスク。

 その特徴は双方ともに、キャンペーンシナリオの山場であり、それ以前のシナリオで集めた情報、成し遂げた行動、作り上げた敵との因縁などが該当するシナリオを導くところだと考えます。
 逆に言えば、その前に当たるシナリオ(『ヨグ=ソトースの影』の第1、3章。『ニャルラトテップの仮面』の2章など)は比較的、「土地型のシナリオ」に近い構成となっています。これはキャンペーンの最初ではPCたちに自由に情報収集や行動をとらせ、事件の全貌が見えるに従ってクライマックスへと雪崩れ込むキャンペーンを行なうためでしょう。

 これらのシナリオでは場所、舞台、時間そして登場人物やそこで行なわれること、起きることがまとめて説明されておりそれに対してどのようにPCが対応できるか説明している印象を受けます。誤解を恐れずに言えば、見せたい山場としての『シーン、事件、イベント』を優先して記述しているように思えるのです。
 いわば、そのシナリオの目的のために遭遇自体がコーディネイトされているのです。
 これは、DnDのアドベンチャーのそれが淡々と記述された強大な敵のデータ、戦術といった遭遇の説明で〆られるのとよく対比できると考えます。