卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

カサンドラ(略)続き

○シナリオで知るゲームシステム
 やや本論から離れますが、D&Dにおける、WoC・TSRの製品D&Dシナリオ(以下製品シナリオと呼びます)と国産D&Dシナリオの(D16が理解している)違いについてここで明らかにしておきましょう。
 それは「遊び方の提示を含んでいるか」と言うことです。ゲーム・システムから導かれる冒険のあり方をプロのデザイナーが「このゲームはこんな風にも遊べる。こんな風に遊ぶ」と、いわば模範として示しているかということです。
 確かに製品としてのシナリオに求められる要件の一つは、「DMの準備の手間を減らし」、「(比較的)適正な冒険を提供する」ことでしょう。そして、国産のシナリオはこの点は、限られたページ数の中で、間違いなくクリアしています。
 ですが、D&Dというゲームの可能性を提示し、DMを新たな局面にいざなうには記述が足りなさ過ぎる。ありていに言って、骨格しか準備できていない。仕方ありません、肉づけをする紙面が与えられていないのです。最初の立ち居地の時点で勝負にならないのです。ライターの苦悩が目に見えます。
 D&Dのマニュアルは、基本的に裁定に必要なルール・データをまとめたものです。遊び方(運用)のガイドラインは3.0版以降はコア・マニュアルにまとめられました。各卓で生じるであろう問題への解決方法やゲーム・マナーについての言及などがそれです。ただ、それでも「このゲームをどうやって遊ぶのか」ということについての十分とはいいがたい。*1

 製品シナリオというものは「このゲームはこう遊ぶ」、「このような冒険が可能である」、「このゲームでこんなことまでできる」ということを示してくれます。つまりこれは、ユーザにシステムの運用方法を示してくれる存在なのです。
 コアのルールブックが“法令集”であるとしたら、シナリオは“判例集”といっていいでしょう。どのルールをどのように使うか。それによりどんな冒険を提示するか。
 シナリオの自作は可能です。ですが、プロのデザイナが作るシナリオはやはりプロの製品なのです。はっきりとクオリティも目的も違います。プロ・デザイナの作る製品シナリオはDMにとっての参考書であり、教科書であり、レシピ集なのです。
 国産D&Dシナリオにはそこまでのことが求められてませんし、それを実現するだけのページ数もありません。限られた紙面と頭打ちされた労力の中でベストを尽くし、セッションを可能にするだけの遭遇を記すので精一杯です。

*1:このあたり、国産RPGの充実ぶりとは大違いです。もちろん、D&Dにだってその種の情報蓄積はあります。DMG2は傑作でした。が、その情報はコア3冊には入ってません。これはそうした説明をコアにいれる必要がない、必要とする人は別に製品やWeb記事・雑誌記事対応するということでしょう。
逆に言うと、日本産RPGの場合必要な情報は基本ルールブック一冊に「すべて」まとめてくれているのです。ゲームの進行・マナー、トラブルシューティングまで。