卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

絶望を超えて財布を開け

 ネットで見聞きする情報っていうのは新聞やテレビからの情報に比べて、間違いなく自分の趣味嗜好によって偏向がかかっている。
 だから、自分と同じ意見、肯ける意見と言うのがあったとしてもそれを当てにしてはいけない、ハズだ。自分が自分にとって気持ち良い情報を選択しているのだと言う自覚なしに、他のサイトの意見を牽くべきではないとわかっているけど。
 けれど、この人(id:Johnnie)の言葉は何故か届いてくる。問答無用で届いてくる。
 で、今回の話(http://d.hatena.ne.jp/Johnnie/20040507)なんですけど。


これまでに、ゼントリのようなアツい作品が正直に受け入れられる市場を形成するために努力してこなかった消費側の歴史が、ゼントリを抹殺してしまったのだ。ゼントリを殺した者の正体は、消費者ひとりひとりの無分別で無責任な選択だったのだ、と序は考えます。


 以上のところがD16が過去からひきずっている後悔に響いた。
 D16はTRPGと言う趣味を中学生の頃からやっている。で、この手段を選んだ理由の一つと言うのが当時、「コンピュータRPGに比べてお金がかからない」からだった。当時一本のファミコンソフトは4800円くらい、PCのソフトは8000〜1万円以上といったところだった記憶している。それに対してTRPGのソフト≒ルールブックは一つ4800円〜。さらに大きな声で言うことじゃないが、
 
 TRPGは紙媒体のゲームであったためにコピーすれば何とかなったのである。
 
 ぶっちゃけ新しいRPGを買うというのはそのRPGにおける必須部分、根幹となるルールセクションのコピー枚数がよっぽど多いときくらいだけだった。時間と使いやすさを犠牲にすれば、ルールはプレイグループに一冊で十分何とかなった。
 自己弁護はいくらでも可能だと思う。当時の小遣いのやりくりとそれでもなお新たなRPGを遊びたいという欲望の間でのせめぎあい。さらに、当時間違いなく存在した地雷ゲームを回避したい気持ち。安上がりで済むならそれに越したことがない。
 けれど、その中で図々しくなっていく、感覚が磨耗していった自分が明らかに居た。何をはきちがえていたのか、高校の頃、D16は随時発売される拡張ルールや追加設定資料・データ集といったものを煙たく思っていた。自分はそれを購入していないにもかかわらず、だ。
 その後、自分にとって完成度の高かったシステムに落ち着いてからは新作を、買うことも遊ぶことすらせずに低い評価を下していた。
 やがて、いつの間にかRPGマガジンはGameぎゃざに移り変わってしまったが、それでもなお自分はそのことを"自分が買う価値を見出せないと評価した"ゲームのせいによるものであるとみなしていた。自分がそのジャンルに深く踏み込んでいるにもかかわらず、『それは自業自得』などと情勢を判断していたのだ。
 ……この頃馬場講座鵜呑みにしてかぶれてたんだよなぁ。ううう、我ながらイタイ。
 自分の過ちに気がついたのは海外のゲーム、サポートが十分にされているRPGに触れるようになってからになる。具体的にはDungeons&Dragons、及びそれをサポートするDragon誌、Dungeon誌だ。
 そこには、えーと、その、なんつーか。
 今まで知らなかったような未知の『物流量』があったのだ。質はともかく(とはいえD16的には規準を十分クリアしている)目もくらむようなアイデア、製品、情報の流通量。
 そして僕が見ている前でD&DはAD&D2版からD&D3版への移行を始めていき、その過程で思い知らされたことがある。
 
 ・情報量、物量があるからこそ選択肢が与えられること。
 ・製品とはアマチュアが及びもしない“アイデア”と“手間”を売るものであること。
 そして、
 ・追加ルールそのほかの使用はメーカーから強いられるものではない、自分達で取捨選択して自分たちのプレイ環境を作っていけばよいということ。
 という今から考えればあまりに当たり前の事実だった。
  
#ただこのあたり、物量がTSRを飛ばしちゃったってのはあるだろうし、今なおRPGとカードゲームでは全然違うらしいし、一概には言えないみたいですが。
 以下はその件に関しての情報


EN World BBS情報ですが、TSRを買ったWotCを買ったHusbroの業績。Games segment net revenues were up 14%, driven by a strong performance from Wizards of the Coast, including the U.S. launch of the DUEL MASTERS trading card game;ということなんで、WotCは業績良し、でも原因はDUEL MASTERSであって、D&D3.5Eとは関係ないのな。
 ま、大手RPGメーカーといっても、ビジネスとしてはCCGには全然適わない訳です。



 幸い、なのだろう。かつてゲームブックが辿ったような道をTRPGは辿ることなく、一時期アイテム数が衰えたりしたものの、今はほぼ毎月何らかのアイテムが出版され、海外RPGも翻訳されている。
 D&D3版やコール・オブ・クトゥルフD20などが日本語化されているというのは嬉しいし、サタスペRemix+なんていう今までに無いようなジャンルのゲームまで出てくるとは思いもしなかった。
 

 理由の一部は、自分が穴熊で単に知らなかっただけと言うのもあるけど。
 で、以下さらに余談。
 今までにないジャンルといったらTRPGのアダルト化をフレーバーテキストカードシステムで成し遂げた「プリティートルーパーズRPG」http://yellow.ribbon.to/~vzen0049/、や「義妹×義兄」のラブコメディを再現する(さらにプレイヤーが義妹だ!)「CuteSisterTRPG」http://f10.aaacafe.ne.jp/~cstyuki/などが注目作だろう。
 ……問題は今までTRPGにないジャンルであるがために、ちょーっと世間の理解を得がたいって言うかシステム的に面白くても遊ぶ人が少ないし、俺も遊ぶ相手選びたい所かもしれない。

 
 新たな隆盛の今を喜ぶことはたやすい。
 だけど、かつての自分の傲慢さ、そしてジャンルが低迷したときに何もできなかった、しなかった無力さを忘れるわけにはいかない。
 よしんば、「自分がwebでさえずることで何かした気になる」ことすら傲慢だといわれようとも、もうあんな目はたくさんだ。
 だからこそ、D16は序さんの、

すべての消費者は賢くならねばならない。  それは確かに絶望的に無理な話だとは思う……能動的に判断し、自分の選択に責任を持つことは非常に面倒なことだし、どう考えたって与えられたものを享受するだけで済む方が楽だから。大体からして、たかがアニメにそこまで時間を割けるほど、みんながみんなヒマな訳じゃない。


の節、そしてここにはあえて引用しなかった、その記事の最後の一節に同意する。
 D16はRPGと言うジャンルに惚れた身として、負けたくないのだ。
 だから声を上げて、叫ぶ。
「おもしろいものは、買う!好きなものは、買う!だから、おもしろいものを創ってくれ!」
 文字にすれば当たり前すぎることを、何度でも。
 
補遺として

 まぁ、それでも。
 別に使命感に駆られてwebにプレイ記事なり何なり載せてるわけじゃない。
 それ自体楽しいから、そしてRPGの楽しさを(なぜかわかんないんだけどさ)誰かに「こんなに面白かったゼ!!」と伝えたいから。
 ただそのときに、
 ちょっとだけ、
 それこそ誤字脱字を気にするくらいの比重で、
 自分の好きなジャンルを誇らしく思って伝えられているか?
 そのことを気遣うくらい。D16のしてることは。
 
 アジるの苦手だし。

 
さらにもひとつ補遺として

 『定期収入が入って、ゲームが買えるようになったからじゃねーノ』という指摘はカンベンな。
 ……当たってるからさ、多分。うん。