アマニタ・パンセリナISBN:4087470253
高校の二年、図書館に入っていた集英社の「青春と読書」という雑誌の中にこのコラムがあった。
誌名から想像されるよりもずっと軽めの雑誌で、夢枕獏の「平成元年の空手チョップ」もこの雑誌に載っていた。図書館で勉強している3年生の先輩の隣でソファで寝転がりながらこの連載を読んでいた(<まねしちゃいけません)。
中島らもというおっさんの名前は朝日新聞の「明るい悩み相談室」で知っていて、えらく朝日新聞とは空気が違うナーと思っていた。
ドラッグの話だけど、ペヨーテやベニテングダケなどの由来、歴史についてざっと長め渡すだけでなく、実際にやってしまう辺りで「どこまでフィクションなんだろう」と思った覚えがある。
もちろんガチでこのおっさんはこんなことやってたわけだけで。呆れたというか、尊敬したというか。
僕は物書きとしての中島らもしか知らない。
エッセイは、含蓄とかでなく、この人と周りの人の奇行と言うかキャラの濃さが面白かった。語り口が楽しい。
小説は、資料から引いた事実などを書くとそこが説明臭くなるきらいがあったけど、書くことと、その順番、そしてとにかくわかりやすい文章を書くので、話がどうなるのかと言う興味で十二分に読めた。
「人体模型の夜」は一番気に入っている短編集だ。
らもさんが亡くなった。
階段から落ちて、脳挫傷で。
悔やみの文章など書かない。僕は本人を知っているわけでもない、単なる一読者に過ぎないから。
「アマニタ・パンセリナ」の執筆中、この人は連載を休載した。鬱がひどくなったのと咳止めシロップの飲みすぎだったと思う。復活した時には相変わらずそのときの様子をこっけいな語り口で書いていた。
「こんな生き方もありなんか」そう思った。
おっさん、面白かったよ。