卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

診察

 生活のリズムが作れないこと、不安感・焦燥感が相変わらず頭をもたげてきたことを相談。自分の思考とか理性(そんなものを信じれば、だが)とは関係なく起こる不安や焦燥感の異物感に『慣れた』自分がいる。
 中学校の頃に十二指腸潰瘍を患ったときのことを思い出す。最初の痛みの鋭さとおののきが過ぎてからは、予期した鈍痛とぶり返す予感に息も絶え絶えになっていた。正体がわかって痛みの鋭さは失せたけれど、いわば『純粋に痛みに集中し苦しがる』ことができなくなってからの方が厄介だった。
 ――ここまでは動ける。
 そうわかっているなら動かずにはいられない自分がいる。それと同時に痛みに甘えたい自分がいる。葛藤を感じる『余裕』ができたのは果たして救いだったのか、否か。
 
 胸を塞がれるような――文字通り、息が詰まり、鼓動が早くなるのだ――焦燥感を感じつつもそれが単に病の『症状』に過ぎず、『肉体的な応答』に過ぎないと思い知らされる。そして、薬で治まるたびに思う。
 
 俺の、感情は誰のものだ?
 
 もとより肉体と精神が完全に二分される対立するものだなどとは思っていない。いや、身体こそが精神を形成する駆動体であることを武道の稽古で実感している。
 ならば、今の俺は何に怯えている。何に焦っている。
 俺の身体はどんな『枯れ尾花』を『幽霊』に見ている。
 わからない。
 知覚→判断→肉体の応答という流れが通常であるなら、今の俺は肉体の判断のみが独存している。
 判断する自分がいない。見つけられていない。
 
 重ねて問う。
 俺の身体は誰のものだ?
 
 処方変更。
 パキシル10mg×2。夕食後。
 デジレル25mg、マイスリー5mg、レンドルミン0.25mg。就寝前。
 頓服としてコンスタン0.4mg
 
 寝酒、日本酒半合。つまみは梅干一個と蜆の佃煮。