卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

[D&D]機動十字軍メカクルセイド

機動十字軍メカクルセイド

前書きに変えて

 以下の記事は、2003/01/26に行なわれたd20シナリオ、『機動十字軍メカクルセイド』第一話「機動戦士Geoffに立つ」および第二話「殴り合い、穴」の内容、及びプレイ風景の写真です。

 そもそも15年以上も前のセッションなのですが、ぱらでぃんさんが自作のOGL作品『Gears & Gigantes』(http://www.nekohaus.net/unagi/gg/)を作るにあたり、

  とのことで、あんなイキオイのみの(いや、DMしてくれたのは桂令夫さんなんで、あんまりこういうこと言うのもナンですが、でもイキオイでした)セッションが何かを残せたのは光栄の極みというほかありません。

 とはいえ、自分がサイトを置いていたTRPG.NET(すでにこの言葉すら懐かしい)が管理人のsfさんの急逝他で、コンテンツが失われてしまい、件の記事もしばらく読めなくなっておりました。

 言及された記事が読めないのはもったいないので、HDDの隅っこから以前のテキストを掘り出して、こちらに再構成しました。

 今読み返すといろいろ思うところはありますが、めんどくさいので当時のままで掲載します(注だけ入れました)。しかし、現在自分がWarhammer他のミニチュアゲームも遊んでること考えると、ホントに15年くらいじゃ人間変わりませんねえ……。

 以下より再掲載。

 第一話「機動戦士Geoffに立つ」

 さて、うちのページではここ最近*1D&Dがほとんどのネタになっているのだけれど、果敢にイロモノに挑戦する姿勢は国内の数あるサイトの中でも屈指のものじゃないかって勝手に思っている。
 この原因は101キャラクター*2という企画のおかげで、イロモノ及びD20サプリを読む人間が多いからじゃないかと思っているのだけどそれ以前に、どうもウチらの周りにはこういったネタを仕込む&仕込まれるのが好きな奴が多いんだろう。

 きっかけはDungeon #95(というかその裏のPolyhedron)に乗っていた、D20MechaCrusade*3。表紙はなんとなく加藤っぽい感じのイラストで人型機動兵器が並んでいるヤツ。なのに中身はエヴァンゲリオンを思わせる猫背のMechaが掌から何か打ち出してたりします。中身はD20Modernを用いてMechaものをやるためのミニゲーム。うだうだと説明するよりもでんこうじさん*4の邦訳タイトルが全てを説明すると思います。曰く、
「機動十字軍メカ・クルセイド」
 これが出た時点でD16は
「いやー、遊びたいですねぇ。イカしてますよ、これ。メカのサイズによって装備ボーナス(Equipment Bonus)が入るってことは、ブルズ・ストレングスの強化ボーナス(Enhancement Bonus)やバーバリアンの激怒とも重なるんでしょ」
 などとおろかな事を口走っていたのだ。
 ただ、これはD20Modern用だからなぁ、まずはD20Modernを読んでからにしようかなぁ。とか思ってたら先ほどのでんこうじさんがとんでもない企画を立ててくれたのである。

”機動十字軍、ジェフに立つ”

 D&Dの基本世界であるグレイホークにはジャイアントにより人間が支配されたジェフという土地がある。ここではレジスタンスがジャイアントの支配に立ち向かっており、AD&Dが1stの頃からここを舞台にしたシナリオが出ていた、らしい。それがAD&D2ndの後半にリニューアルされた。タイトルは「Against the Giants - The Liberation of the Geoff」*5。このシナリオをMechaにのったPCでやろうというもの。

「なるほど、生巨人対鋼の巨人ですか。カッコイイですね。やりますやります」

「では準備をしておこう。メンツにどんなロボに乗りたいか聞いておこう」

 とDMを引き受けてくれたでんこうじさんが根回しをしてくれて当日と相成る。

 プレイヤとキャラクターは次の通り。

フェイフェイ(ヒューマン、女性、3レベル・ファイター)

 多分ジェフ近辺でファイターの訓練を受けた娘*6。師匠が何をトチ狂ったかサイズ(鎌)の使い手でそれを受けて彼女もサイズ使い。クリティカルの4倍一発を狙う。

 特技は《Cleave/薙ぎ払い》、《Combat Reflexes/迎え討ち》、《Improved Initiative/イニシアチブ強化》、《Power Attack/強打》、《Weapon Focus/武器熟練》とこのレベルのファイターの実力を発揮。

 ところで、もとネタはやっぱりこれ*7なんだろうか。プレイヤーはたっちーさん。

ベイルドワーフ、男性、3レベル・パラディン

 対ジャイアント戦において、ドワーフの持つ+4回避ボーナスは非常に有効。というわけでもなかろうがジェフ近辺には絶対いるだろうドワーフパラディン。《Improved Initiative/イニシアチブ強化》、《Weapon Focus/武器熟練 ロングソード》を所持している。スタンダードに前線。ところで気がついたが彼のLay on Hands(レイ・オン・ハンズ)がこのパーティの唯一の治癒手段だったような気がする……。*8プレイヤーはTNさん。

アルスター(人間、男性、2レベル・ローグ/1レベル・レンジャー)

 もちろんレンジャーとしてのFavored Enemy(得意な敵)はジャイアント。特技は《Improved Initiative/イニシアチブ強化》、《Lightning Reflexes/神速の反応》で前者でSneak Attack(急所攻撃)、後者でEvasion(身かわし)を強化したスタンダードなローグ/レンジャー。プレイヤーは松谷先輩。

シンツァ(エルフ、男性、3レベル・ウィザード)

 命中判定を必要とするスペルはその分、割と効率がいいと思っているのでそれを実際に行ってみようと考えた精密射撃支援型ウィザード*9。《Point Blank Shot/近距離射撃》、《Precise Shot/精密射撃》、あとはボーナスで貰った《Scribe Scroll/巻物作成》。

 呪文はシールドにメイジアーマー、グリース。メルフズ・アシッド・アロー、グリッターダストといった所。ちょっと冒険な選択だと思う。というか、かなりアヤシイ(笑)。プレイヤはD16

 なお、彼の居たエルフの部族では何故か、必ず一人のエルフはエルフの嗜みとしての弓の訓練を行わず、棒の根元と先に照門と照星のついた「何か」によって狙いをつけると言う訓練を受けていた。なんのことやら。

 さて、キャラクターのコンセプトなどはあらかじめ伝えておきほぼキャラクターを作り終えた状態ででんこうじさん宅へ。と、中で何か不穏な動きが。

「どーもー」
「あ、ちょっと待って今片付けるから」

 上がると有機溶剤のにおい、フィギュアでも塗ってのかしゃんと思いつつあがると、先に来ていたTN氏があるものを取りだしている。

「もしかして、それは……」
「いやいやまぁまぁ」

 そういえば、今日は何かと紙の箱などが置いてあるような気がする。
 深く追求するのは野暮なので早速シナリオに。

……ジェフはここ十数年に渡り巨人族の支配を受け、巨人とその配下として働くゴブリン、オークどもに民草は苦しめられていた。かつてのジェフの首都ゴーナは廃墟となって久しく、今残る人類の最後の砦はホコック。君達はそれぞれジャイアントに対して戦いを挑むレジスタンスである……

 BGMはダンバインで雰囲気を出しつつ、状況を確認。

「……今また、君たちに新たな情報が入った。丘巨人の族長がその砦の中に多くの奴隷を連れてゆき、何か採掘作業をしているようなのだ」
「一体何を?」
「知っての通り、このフラネスの地にはかつて偉大な帝国がありそれぞれに強大な魔術を使用して戦った。その結果がフラネスの西に広がる……」
「乾燥草原(Dry Steppes)と塵海(Sea of Dust)……」
「そして、その魔法の中には現在ゴーレムとして知られるコンストラクト(人造)を兵士として使用するものもあったという」
「つまり、彼らが発掘しようとしているのはその古代スエルもしくはバクルーニー帝国の遺産だと?」
「可能性の話ではあるが、かりにそれが事実であった場合もはやジェフに人の子の生きる場所は無くなる。我々はやらねばならない」

 NPCパラディンの声に耳を傾けつつも全員が同じ事を考えている。

『多分……掘り返しているんだろうなぁ』

 それはそれとして、「丘巨人の族長の砦」というのが気になる。

「あのー、騎士様。敵の陣容は」
「丘巨人が二人、詰めているのが確認されている*10

 こちらの手勢は、PC4人に、NPCとして隊長のパラディン、それに従騎士と従軍魔術師。十数人のスピアマンといった所。ラウンドに一人前線のスピアマンがいなくなるだろうけど、二人なら数で押し切れるのではないか。そんな事を考えてPC達は丘巨人の砦へ。

誰か:「ところで、シンツァ。スリープとか持ってる?」
D16 :「いんにゃ、持ってないッス。ジャイアントには効かないしー」
DM :「配下のホブゴブリンとかには効くんじゃ……」
D16 :「……」
 しまったと思ったものである。

 さて、砦に向かう。遠目に見ると単なる丸太小屋と見えたが近づくにつれその一本の丸太の太さに愕然とする。そう、この砦は人間のそれをすっかり丘巨人サイズに大きくしたものであったのだ。

 このあたりでかなり不安になるが仕方が無い。あと、今思うにメタなレベルでロボットに乗って何かするのが今回のメインだと思っていたので、こうした通常のエンカウンターに対してかなり無造作に立ち回っていた気がする。で、その対価はきっちりと払わされる羽目になった。

 PC達が聞いていたのは丘巨人が2匹。

 門の前にいたのは3匹*11。これくらいはまぁ、誤差の範囲だろう、そう言って認めてやらなくも無い。で、それぞれが引き綱に狼めいた大きな肉食獣をつけて手に握っている。で、真中の一匹は毛皮が真っ白。

 ……ペットを飼っているならそのことも教えて欲しかったなー*12

 先行偵察していれば対応は出来たと思うが漢らしさ爆発で正面突破、すでにチャージができる場所に来てから聞いていないなどと言っても仕方ないのだ。

 戦端が切られ、殺戮の嵐が吹き荒れた。

 突撃する騎士達のランスが、丘巨人のどてっぱらにぶち当たるが、貫いたのはパラディンの一発ぐらい。前線組のフェイフェイとベイルが先行するのを見つつ、アルスターとシンツァは退避について考えていたりする。で、その考えを裏付けるように前線のスピアマン達がまさしく石川賢*13版『天と地と*14ライクに斬り飛ばされ、叩き潰され、噛み千切られている。つくづく《Cleave/薙ぎ払い》ってのは有用なフィートだと思った。

「畜生、俺達もあいつらくらいに大きければ、力強ければ!(←伏線)」

 人がゴミのように切り飛ばされていく中、2ラウンドほどでプレイヤ達は撤退に動く。ところが悪いことに、柵の後ろからはジャイアンの歌が聞こえてくる。どうも丘巨人のバード*15がいてInspire Courage(勇気を与える)をしているらしい。そして、こちらは……。

「何でこの兵隊達逃げないんでしょうかねー?」
「……もしかして、パラディンのAura of Courage(勇気のオーラ)のおかげかも」
「……それはほぼ、愛国薬状態です、あんまりです。前線のパラディン衆に撤退を進言しましょう」

 こんなわけでコテンコテンにやられて丘巨人の館から逃げ出す。それまでの間に追いすがるワーグをフェイフェイが落として一矢報いるが所詮負け戦。
 隊長のパラディンは聖騎士らしく殿を勤めるというか逃げそびれると言うかしてそのまま討ち死に。ちなみに彼が死んだおかげで兵隊たちは逃げ出したので結果的にはそのほうが幸せだったかも。
 残党をまとめ方針を検討する。まず、潜入策なら人数は不要と考え生き残りをホコックに帰す。

 で、飯を食おうと近くの水場に行ったところ、そこでPC達は瓶に詰められた手紙を見つけた。中には助けを求める悲痛な内容。採掘に動員されている囚われ人のもののようだ。ざっと地勢を確認する。どうやらこの水源はあの丘巨人の館の下流に当たるようだ。この瓶はその流れに乗ってきたのだろう。
 巨人にとってはただの排水溝かもしれないが、我々にとっては十分な侵入口。英気を整えた上で侵入することが決まった。
 水源はやがて洞窟の中に入る。湿った洞窟はある意味PC達にとって馴染み深い所だ。少なくともオープンフィールドで巨人と殴りあうより安心する。

 そして安心した途端襲われた。まったく何を勘違いしていたのだか。何か無いわけなかろうに。
 で、フィギュアを出される。

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巨大地虫に襲われるPCたち

 うぎゃあ。

 フィギュアを出された時点で、パープルワームかと思い腰が抜けた。
 が、口元から触手が八本あると聞かされて安心する……。

 間違っている。

 3レベルパーティとはいえ、前衛の片方は盾を持っていないのだ。

「あ、麻痺った(ひぃ)」
「すまん、こちらも(きゃあ)」

 結局シンツァが従軍魔術師の死体から預かった呪文書から準備したスリープを使い、このキャリオン・クローラー(腐肉喰い地蟲)を眠らせた。
 ……途中まで忘れていたのは内緒だ。
 しかし先ほどの戦いとあわせて、この時点でスペルのリソースは切れてしまった。0LVの初級呪文(キャントリップ)を上手く使いこなしてゆくしかない*16
 やがて、PC達は槌音のする広い洞窟を見つける。予想通り採掘坑に突き当たったのだ。

 中を覗き込む。ホブゴブリンが囚われ人を鞭打って何かを掘り出している。PC達が見ることが出来るのはその一部だけ。松明の光に照らされるのは二本の尖った角だ。

ミノタウロスような角ですか?」
「いや、もっと鋭角的なシルエットだ。生き物のものとは思えない……」

 フェイフェイが青い顔をして息を吐く。いや、それを言うならパーティの誰もがフェイフェイと同じものを感じていた。

「……語りかけてくる……。あれが」

 誰かの口から言葉が漏れる。そしてその言葉に答えるように大地が鳴動した。
 いや、ちがう。鳴動しているのは。『あれ』、だ。
 がらがらと岩が崩れた。角の下から緑色の光がカッと輝いた*17
 起動音が聞こえた。何か確信を持つかのようにフェイフェイが歩み寄る。岩を跳ね除けて鋼鉄の掌が差し伸べられる。そして見上げたフェイフェイの瞳にこんな姿が写った。

「まるで、死の神ネラルを思わせる巨大な鎌を持ったその巨人はかすかに鳴動をはじめている!」
そしてフロアタイルの上に置かれるプラモデルはガンダム・デスサイズ。

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ビームサイズを構えた、ファイターメカ

 

「このために師匠は……」

 洞窟の天井に頭を擦るように30フィートはある鉄の巨人がフェイフェイを胸のコクピットに誘う。そして、ファイターメカは洞窟の奥に指を差す。
 PCたちは歩き出した。その先にはなんとあと三体の鉄の巨人がいたのである!

 先頭にたつ巨人はその姿白く、兜の前立はアンシンメトリー。胸に煌々とホーリーシンボルが輝いている。
 モデルはパトレイバーイングラム98。

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パラディン・メカ、胸には桜のホーリーシンボル


 その隣に控えるのはうって変わって宵闇から染み出したように黒い機体。片ひざをついたその姿はあたかも撓んだばねのよう。黒い鉄兜の下からはあの『死神』の巨人と同じ鋭角的な角と二つの目が輝く。
 モデルはガンダムシュピーゲル

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レンジャーメカ、当然《二刀流》


 そして、その後ろには自分の身長ほどもある杖のようなものを抱えた巨人が。

 バスターガンダムのモデルだ

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ウィザード・メカ、チェーンガン・スタッフを構える


 PC達の頭に、眠りから覚めた巨人達の言葉が響いた。

「遠き眠りを経て再び我らは目覚めた。
 我らは堅き鎧にして、鋭き剣、確かなる盾にして、長き槍。人によりて作られ、眼前の敵を打ち滅ぼさんがためにのみ作られし心もたぬ器。
 心もつものよ、我に何を望む。お前が望むならお前は神にも悪魔にもなりうるのだ。かつて帝国の戦士がそうしたように……!」*18

 ここでBGMが入る。よりによって『復活のイデオン』!これは、狙ってたでしょう?でんこうじさん!

 洞窟の奥、実際には地上からの入り口付近が騒がしくなる。異常が伝わったのだろう。レンジャーのアルスターが目を細め呟く。

「毛むくじゃらのホブゴブリン?バグベアだ。ざっと見ても20匹以上はいる」
「俺達の望むもの……」
「生存と復讐だ!」

 それぞれ身の内から聞こえる声に従い、巨人の下へ走る。
 白いパラディンロボにはベイルが。
 黒いローグロボにはアルスターが。
 そして茶色のウィザードロボにはシンツァが。

 バグベアは隊伍をなして洞窟を進軍してくる。その数20をはるかに超す勢いだ。

「マスター、これってこの話用にエンカウンタいじったんですか?」
「……」
「マスター?」
「俺が悪いんじゃない。このシナリオは栄えあるAD&D一版の一番最初のシナリオだ。疑うなら、Gary Gygaxに文句を言うのだ*19
「……」

 しかし、今となっては怖れるものは何も無い。鋼の巨体に身をゆだね、望むは敵の首級。

 イニシアチブが回る。

フェイフェイ:「マスター、RP-91リーパー・ビームサイズ(命中判定とダメージに+5)で攻撃します。当たりました。ダメージは6d10+5+【筋】修正の1.5倍(超大型サイズのMechaは搭乗者の【筋】に+16の装備ボーナス(Equipment Bonus)を与える、ただしサイズ修正で命中判定とACに-2つく)+《Weapon Specialization/武器開眼》+2で、……50とちょっと」
DM     :「うむ、死んだ」
フェイフェイ:「《Cleave/薙ぎ払い》が発動します、隣のバグベアに……当たりました。ダメージは最低でも30くらいですけど」
DM     :「うむ、それも死んだ」
他プレイヤー:「……」

『まるで、虫けらをつぶすみたいにさ』

 全員の脳裏に松本めぐむ(現・尾瀬あきら)版大空魔竜ガイキングでのサコン・ゲンとツワブキ・サンシローの会話が浮かんで、消えた。

 イニシアチブが回る。

アルスター:「マスター、挟撃(flanking)の位置を確保するためにここに移動します」
DM    :「それはバグベアの機会攻撃範囲(Threatend Area)内の移動だ。機会攻撃(Attack of opportunity)を誘発する」
アルスター:「<Tumble/軽業>で移動します。これなら機会攻撃を受けませんね」
全員   :『ちょっと待て』
アルスター:「ローグメカには防具による判定ペナルティが無いので、難易度15で機会攻撃範囲を抜けます。抜けました。この洞窟、マップで見る分には超大型サイズのクリーチャーは動けます。<Tumble/軽業>はできますね」
DM    :「……うむ、できる」

 重ねて言うが30フィートはある鉄の巨人がMサイズのバグベアの頭上をトンボを切って抜けてゆき、スタッと着地したのである。ガンダムシュピーゲルではなくて忍者戦士飛影だね、こりゃ。
 二体のバグベアが肉片と化す。

 そして、パラディンメカのビームサーベルとウィザードメカのチェーンガンが確実に敵を葬り去ってゆく。

 いや、これは危険だ。力を振るう喜びが特に。
 しかし、この力は大いなる復讐のための力なのだ。決して今目の前にいる小さな敵を撃つための力ではない。
 我らの敵は階上、そう、丘巨人達だ。
 PC達は、いや、古代スエルの鉄巨人達は先日の恨みを晴らすべく階段を上った。巨人ども見ていろ。今やお前達の敵はちっぽけな人間ではない。貴様らに並ぶ体躯、貴様らを超える鋼と魔法をもつ別の巨人なのだ!
 ここで、「機動戦士Geoffに立つ」は終了。

 途中からは大笑いでしたがとりあえずプレイした感覚では巨人族との遭遇ではバランスがちょうどいいかもしれない。確かにバグベア相手ではオーバーパワーだったけど、巨人族ジャイアント)はそれ以上に当ててくるはずだし。
 ウィザードメカのスペル相当能力とレンジャー/ローグメカの二刀流時の命中率の意外な悪さはロボ(Mecha)のデザイン時にもう少し考えればカバーできるハズ。

第二話「殴りあい、穴」

 以降は後日にジャイアントとの決戦を行なったときの内容。
 ぶっちゃけ、シナリオとしては階段を上って丘巨人の住処を荒らしまくっただけなんだけど、燃えました。
 キャラクター、及び搭乗メカは当然変わらず。呪文はボーナスで取り直し。
 そういえば、このシナリオですがもともと巨人の館を急襲するシナリオなので部屋や通路のサイズが当然巨人用です。するってぇと、ダンジョン(館ですけど)の中をモビルスーツが歩くという図が可能に……。とはいえ、ガンダムの設定頭頂高は18m=60フィートですけど、DnDではそのサイズは巨大サイズ(モンスターマニュアル準拠で32~64フィート)になってしまい、さすがにそれじゃ大きすぎるんでこのゲームでは超大型サイズ(16~32フィート)としています。このシステムだといわゆるスーパーロボットの多くは超巨大サイズですね。

参考.有名ロボットの体高、及びDnDでのサイズ
比較参考・ストームジャイアン
6.4m=21フィート、約5.5トン=12,000ポンド。超大型サイズ。
忍者戦士飛影
3.6m=11.81フィート、0.5トン=1,102ポンド。大型サイズ。
鉄の城、マジンガーZ
18m=60フィート、20トン=44,090ポンド。巨大サイズ(かなり超巨大サイズに近い)
超電磁ロボ、コン・バトラーV
57m=187フィート、550トン=1,213,000ポンド。超巨大サイズ
超光速万能大型変形合体マシン兵器、ガンバスター1号
200m=656.2フィート、9800トン=21,610,000ポンド……。あー、そろそろ建造物かな 

 さて、地下の坑道から丘巨人の館に侵入した4人のPCたち、もとい4体のロボの出た先にいたトロールとオーガは……目を疑った。何が起きているかわからない感じだった。 無理もない。

 茶の間の扉を開けて、特捜ロボジャンパーソンが出てきたり、仮面ライダー555が出てきたらおどろくわな。

 オーガとトロルは料理中だったハーフリングを手から落とすと、叫び声を挙げ殴りかかってくる。ファイターロボのビームサイズ(ビーム鎌)がその首を切り落とす。トロル自慢の再生能力もエネルギー武装の前では役に立たないわけだ*20

 この次がちょっと記憶があやふや。

 丘巨人たちがたむろする中央の大広間の様子を探ったはずなのだが、何となくレンジャー・ローグロボが<隠れ身>して偵察した気がしたんだが、さすがにロボを降りたんだったかもしれない。ただ、ロボにつけた隠蔽装置(Stealth Kit、<隠れ身>と<忍び足>に+10)のおかげで結構何とかなる<隠れ身>の技能値だった気がする。

 とりあえず、いるのはたしかでどうやら宴会の真っ最中らしい*21

 ジャイアントの宴会の真っ只中に切り込むなんて、通常のDnDだったら狂気の沙汰だけどこちらは鋼の力を手に入れている。何をか恐れることやあらんと。いきなり壁を蹴り破って、巨人の宴会場にカチコミをかける。

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宴会場の巨人達


 ここで誤算があったこと。
 連中は宴会中だった。
 宴会ってのはどうも、客をもてなすためのものだったらしい。
 客って誰よ?
 そこには、丘巨人(ヒルジャイアント)のほかに、霜巨人(フロスト・ジャイアント)と炎巨人(ファイア・ジャイアント)、そしてさらには雲巨人(クラウドジャイアント)までいたのである。
 ぶっちゃけ、写真にみえるフィギュアどおりのものがいたのである。
 もう一度状況をロングショットで見てみよう。

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 ぜひ、上の写真をクリックしてどんな連中がいるか見ていただきたい。なお、フィギュアを前に復讐の笑みを浮かべているのはD16と松谷先輩である。
 とはいえ、この時点ではプレイヤー達は状況を楽観視していた。なにしろ、こちらには伝説の鉄巨人の力がある!

 激闘のイニシャチブが振られた。
 順当に手番が回るも、巨人の族長(上記写真の真ん中にいる一番立派なフィギュア)は当初、取り巻きのオーガや丘巨人の後ろにいて到達できない。仕方ないので手前から崩してゆくことにする。
 ところが、この時点でプレイヤー達は巨人たちの力を思い知ることになる。バグベアやトロル、オーガ風情と異なり連中のヒット・ポイントは高く、そんじょそこらの打撃力では相手を一撃で屠ることなどできないのだ。さらに、当然といえば当然なのだが、巨人に乗っているPCたちは3レベル程度。

 基本攻撃ボーナスが低く、複数回攻撃ができないのだ。

 足止めしての殴り合いでは、実はジャイアントたちの方こそ、その高い基本攻撃ボーナスによって手数多く打撃を打ち込んでくる。
 正直、機体の大きさなどから*22アーマークラス自体は普通に重装備をしたファイターより2、3割いいといった程度なので、たとえ普通の丘巨人とはいえ一撃めは当たる*23。そして連中のダメージ能力はモンスターの中でも1,2を争うときている。この熾烈な削りあいにあってPCたちの治癒手段はパラディンロボにのったドワーフパラディン、ベイルのレイ・オン・ハンズのみである。

 頼りになったのはロボの装甲だった。Mecha Crusadeのルールでは搭乗するMechaつまりロボットはACとは別に硬度をもっており、一撃ごとにダメージから硬度を引くことができるのだ。標準であるAlumisteel装甲は超大型サイズのMechaに200hpと10ポイントの硬度を提供する。

 そして、ファイターロボ、フェイフェイのデスサイズは1ランク上のDuralloy装甲で構築されている。このDuraloy装甲はhpは200とAlumisteelと同じだが硬度が15ポイントと標準の1.5倍だ。フェイフェイのファイターロボとベイルのパラディンロボが前線をつくり、アルスターのレンジャー/ローグロボが<軽業>による高機動移動で挟撃位置をとり、二刀流からの急所攻撃を行なう。

 ところが、敵もおっそろしかった。

DM :「族長が雄たけびを上げる。あと、周りの親衛隊も」
PL :「それは情景描写ですか?」
DM :「いや、激怒した*24

 淡々と、恐ろしいことゆうなやといった感じである。激怒して両手武器でグレート・アックスでクリティカル*25とかやられてしまったら、さすがのMechaの装甲もヤバイ。そう、硬度は強度の低いダメージが複数回当たるのは何とかなるが、甚大なダメージが一気に来るとありがたみがないのだ。

 その上、

DM :「あと、族長の嫁さんが歌い始めた」
PL :「へ?」
DM :「ほら、門のところで歌声が聞こえてきたって?」

 ああ、たしかにそんなこと言ってたよ。まさか、丘巨人の族長夫妻がバーバリアンとバードの夫妻とは思わなかった。盲を開かれた思いとはこのことである。
 バードの呪歌はInspire Courage(勇気を与える)。命中判定その他にボーナス。地味に痛い。さらに、この次のラウンドになんか呪文打たれたらかなわない。
 ここぞとD16のウィザードは呪文を唱える。コックピットで唱えた呪文は機体に備え付けられた、マジック・コンバーターにより対Mecha用に威力を倍増されて解き放たれる。喰らえ!メルフズ・アシッド・アロー(魔術師メルフの酸の矢)!!

PL :「2d4×2でえーと11ダメージ、次のラウンドもです……」

 いかん、地味だっ!さらには、ダメージが少なすぎるっ!
 物理殴りに比べて呪文のダメージの増加率が低く、戦局にさほど影響しないと踏んだので次からはダメージ系ではなく精神系でかく乱しようと考える。
 さて、敵は間合いを詰めて殴りかかってくる。間合いを持っているので二重のひまわり(二重に包囲されてタコ殴り)で血の雨ならぬ冷却水の雨が降る。
 手数が少ないので、パラディンロボとローグ/レンジャーロボで削り、ファイターロボでトドメを刺す。ファイターのフェイフェイが持つ《Cleave/薙ぎ払い》の特技を生かして行く戦法だ。ファイターの一撃で敵が落ちれば、その時点で《Cleave/薙ぎ払い》による追加攻撃が発生する。実質的な攻撃回数を増やすことになるわけだ。まして、敵の数が圧倒している今とにかく敵を減らしたい。
 しかし見よ、この雄雄しきパラディンロボの雄姿。ジャイアントのフィギュアとはほぼ同縮尺なので、殴られるジャイアントも恐ろしいことだろう。

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敵を撃つパラディンロボの雄姿


 大味に見えて緻密な削りあいがつづく。ファイターに攻撃が集中するように、互いに上手に挟撃できる位置を確保できるように、そしてダメージポテンシャルのある敵がファイターロボを殴るように動く。
 ウィザードは客分の火巨人に対してレイ・オヴ・フロスト(冷気の光線)の呪文を打ち込もうとする。焼け石に水だが他の巨人に撃つよりもこの方がダメージが行く。ハズだが……。

PL :「あ゛」

 射程距離は25フィート+2レベルにつき5フィート。3レベルの現時点では30フィートだ。
 つか、その距離まで近寄ったら次のターンタコ殴りですって。そう、サイズがおおきくなっても呪文の射程は変わらないので相対的に近づくことになる。30フィートなんて互いに間合いが10~15フィートある中では接触よりかマシ程度である*26
 とはいえ、なんとか敵の数を減らしていくことには成功する。族長にも手が届く。その時、

DM :「族長は、角笛を吹いた。館の外の方から大地を揺るがすような馬蹄の轟きが聞こえてくる」
全員 :『へ?』

 そしてマスターは心底楽しそうにフィギュアを配置したのだった*27

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大地を揺るがす巨人騎兵


PL :「赤騎士デスカインと青騎士ヘルダインって言いたいンだなッ!違うかマスターッ!」

DM :「……(視線を逸らしてから)なぜわかった?」

全員 :『わからいでかーっ!』

 3版環境での一撃大ダメージの筆頭、ランスによる騎乗突撃である*28。まさかこれをジャイアントにやられるとは思わなかった。相手は少なくとも騎乗戦闘をできるだけの特技を持ったファイターレベル持ちのジャイアントだ。
 幸い、迎え撃ったのはドワーフパラディンのベイルが駆るパラディンロボ。

PL :「マスター、私対ジャイアントに+4のACボーナスがあるんですが。適用されますか?」
DM :「待った、ロボに乗っているから身長は同じはずだ」
PL :「ドワーフのこのボーナスは修練によるものです。サイズによるものではありません。つまり、対ジャイアント戦のノウハウをこのキャラは知っているのです。そしてそれはロボットに乗っていても適用できるのです。ロボットのサイズはどうあれ
DM :「……う、うむ。もっともだ。ならばボーナスを適用したまえ」
PL :「ではACはこれくらいで、命中判定どうぞ」
DM :「……ころころ。外れた……が(納得行かない顔)」
PL :「気にせず次行きましょう」

 やがて、最大のダメージ能力を持つ雲巨人と炎巨人たちが倒れたあたりから戦局は次第に収束しついには最後の巨人を叩き斬ったのである。

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闘い終わって勝ち鬨を上げるローグロボとパラディンロボ

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血まみれで、おすましのポーズをとるファイターロボ(中身は女の子ってことなので……)

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殺戮の宴を満喫し、ご満悦の松谷先輩


といった感じで、第二部『殴り合い、穴』はほぼ殴り合いに終始した。

 意外だったのが、バランス的にはちょうど良かったということ。オーガ程度はたしかに鎧袖一触だったが、雲巨人のモーニングスターあたりはかなり打撃力があって、それぞれのロボはhpの半分以上を失っていたのである。楽勝と思っていたが割りとハラハラさせられた。

 最も逆に、自分なんかはこうしたジャイアントと五分に闘うDnDのキャラクターのバケモノっぷりを再認識したりしたのだが。

 あとは呪文の選択にもよるのだろうが、たとえハード的に強化されていてもウィザードはこのレベルではできることが少なかった。スリープその他の無力化スペルは相手のヒットダイスが高いと聞きにくく、低いレベルなら殴ったほうが早い。そして、ダメージスペルは単体目標では対してダメージを与えられなかった。ソーサラーでシールド、トゥルーストライクあたりを使いこなせばそれなりに前に出られたかもしれない。

 それはそれとして、造形物を使って遊ぶというのは危険なほどに楽しい。

 平均年齢は30を超えている連中がフィギュアを並べて、下から眺めてぎゃあぎゃあ言ってるさまはまったくガキもいいところだ*29
 今回フィギュアをお貸しいただいた岡田さんにはこの場を借りて「本当にありがとうございました」と、お礼を申し上げたい。
 あとは、小声でお詫びも。あんなに立派なフィギュアをこんなバカなセッションに使ってすみませーん。
   ここで、今回のフィギュアを並べて記念写真。

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・全員集合!お疲れ様でした。

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・主役の族長をつとめました英国シタデル社、ウォーハンマーシリーズのジャイアントさんです。グレナディア社のストームジャイアントは今回クラウドジャイアント役で。

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・脇を固めるサイクロプスヒルジャイアント、ファイアジャイアント、小さいのはオークの皆さん。

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・正面でガウンを着ているのは敵方紅一点、丘巨人の奥方。


 今回のゲームではゲーム翻訳家、岡田伸さんから見事なフィギュアを貸していただきました。
 岡田さんのサイト『遊び人長屋』では、今回使用したフィギュア以外にもたくさんのメタルフィギュア、そしてそれを使ったゲームの様子の写真などが掲載されています。ぜひ、そちらも訪れてみてはいかがでしょうか。

*1:2004年、D&D3版が登場し、d20バブルが猖獗を極めてた頃、だったと思う

*2:別企画、そのうちまた

*3:こんな表紙https://rpggeek.com/image/573518/dungeon-issue-95-nov-2002-polyhedron-issue-154

*4:桂令夫さん、当時自分のサイトに登場するときには別名義だった

*5:この後4版でこれをモチーフにした『巨人族の逆襲』とか、その前のAD&D1stの巨人族シナリオ3つがD&D5版の『大口亭綺譚』で再録されるとは思わなかった

*6:当然ながら15年以上前なのでアイドルとは関係ない

*7:しみじみと時代を感じる

*8:3版系列なので狂気の沙汰

*9:これをやり過ぎると若獅子の戦賦のスリンガーになる

*10:我々は3レベルである

*11:我々は3レベルである!

*12:我々は! 3レベルで! ある!!

*13:当時は存命

*14:

 

天と地と―上杉謙信物語 (上) (講談社漫画文庫)

天と地と―上杉謙信物語 (上) (講談社漫画文庫)

 

 

*15:クリーチャーにクラス持たせる3版がもたらしたロマンと悲劇は枚挙に暇がない

*16:三版なので初級呪文も回数制、[無限回]ではない

*17:こういう演出も時代を感じる

*18:いろいろ混ざってる

*19:『大口亭綺譚』掲載版はもすこしマシ

*20:まあ、熱だしな

*21:ここ、『大口亭綺譚』があるならぜひ確認して頂きたい。元ネタがひどい

*22:3版では体がデカいとACが下がった

*23:連続攻撃は一発目から順番に命中判定ボーナスが下がる、そんなルールもありました

*24:バーバリアンのレベルを持たせてた

*25:三倍ダメージ

*26:元のMecha Crusadeにウィザードのルールがないので、適宜デッチアップしたルールだったが穴だった

*27:あの笑みは15年経っても思い出せる

*28:ホントに3版はダメージ増加の手段が多かったなぁ

*29:重ねて言うが、40の大台越しても同じことをしているぞ