卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

技能チャレンジについて、断片各種

 以下、mixiの方でとりとめないままに書き留めた技能チャレンジについての考察。転載する。
 結局途中までで考察は止まっているのだけど、現時点でのノウハウは「よくわかる本II」の記事に盛り込んだ(よくわかる本IIについてはこちら)。
 技能チャレンジについてはD16自身も理解が何回か変わっている。
 
 最初はガンドッグのターゲッティング・レンジ・システム(TRS)などのように、非戦闘遭遇の進行度合いを目に見えるかたちで示し、個々の技能判定のもつ意味や対処方法でドラマを持ち込むものかと思っていた(【D&D】技能チャレンジ、3回の失敗についての記事はその頃の考え)。
 ただ、「よくわかる本II」の記事を書くための下調べをする中で、そのとらえ方は変わってきている。どちらかといえば、技能チャレンジというのは以前の記事で述べた“フリースタイルな技能チャレンジ”が本来目指したものであり、そしてあの書式というのは自由度が高く、様々なことが起こりうる実際の非戦闘遭遇をDMが処理する時の指針、および非戦闘遭遇を克服することの定量化を目指したものだろうという考えに至っている。この辺は【D&D】技能チャレンジについての誤解で示してみた。
 実際のところ、この辺はもっと洗練されたかたちにして欲しい気はするのだけど、そこについてはDMG2あたりでやってくれるんじゃないかと、期待している。

技能チャレンジ、3回の失敗について

 技能チャレンジのルールは一回大きな改訂が入っている。日本語版では対応済みなのだが、もとは技能チャレンジに失敗する、失敗カウントの数は3ではなかったのだ。
 以前の版では必要とされる成功カウントの半分が要求されていた。その頃には技能判定の難易度も今より5くらいずつ高かったので、結構失敗カウント稼ぐことも多く、それ故だったのだろう。
 で、それに伴いいまの“3アウト制”になったのだけど。この大改訂には(デザイナの糸があったかどうかは別にして)もう一つの意味が出てきたなと思っている。
 以降、日本語環境にはあんまり関係ないけどしばしおつきあいいただきたい。
 
“PCが現在取り組んでいる事象に対して、どの程度成功(or 失敗)しているかが模式化されて一目で分かる”
 
 これをわかりやすくするために、技能チャレンジの大改訂、つまり“すべての複雑さで3回失敗でアウトとする”という変更が成されたんじゃないかと思っている。
 実のところ、技能チャレンジにおける“カウントされうる失敗”というのはただ単に技能判定を失敗しただけの場合などは含まれない。意味のある失敗を数えるものだ。
 
 で、技能チャレンジの運用として、複雑さ=何回成功すればいいか、を知らせないというアプローチはあり得る。
 たとえば、普通に市街で情報収集を行ない、情報屋から“これは”という情報を得た時、DMがPL達の目の前でコインを一枚、積んだとしよう。
 つまり、これは技能チャレンジとして処理する遭遇と言うことだ。
 ふつうにロールプレイとして聞き込みその他の行動を行ない、そのたびに時々技能判定を要求される。クリアする。実際のプレイングによって大体どれくらい真相に近づいているかという検討はつくだろうが、成功が4つ重なってもまだ、チャレンジは続いている。
 『これは、なにか背後があるのでは?』
 と、感づく一瞬である。
 ただ、複雑さを知らせないというアプローチは、以前の複雑さによって失敗しうる回数が変動する技能チャレンジには適用できない。何回失敗できるかが見積もれないと、リソースの投下タイミングを見計らうことができないからだ。
 
 ところが、改訂後の「重要な失敗三回でアウト」ならばどの複雑さでも2回失敗した時点、DMが髑髏のマーカーを二つ重ねた時点でもう後はないとわかる。
 
 以前は複雑さが5であれば、6回失敗する前に12回成功すれば良かった。
 改訂後は、3回失敗する前に12回成功。数だけ見れば明らかに、大変になっている(実際には技能判定の難易度に大きく訂正が入って、技能があってそこそこ能力値があればそんなに失敗しない)。
 けれど、失敗できる回数が常に同じ、明示されて3回ってのは逆にずいぶんと試みやすくなった、と言うか成功失敗の目算が立てやすくなった。
 
 改訂はそういうことなのかな、と思った。
 
 あと、“PCが現在取り組んでいる事象に対して、どの程度成功(or 失敗)しているか”という視点で判定を持ち込み、これによって非戦闘遭遇を処理しているのが技能チャレンジなんだなぁ、とか。

技能チャレンジについて・壱

 内容的には前後するが技能チャレンジの基本を詰めようとしてた文章。
 このあたりで、熟練DMがやっていた判断や、シナリオを作るさいの省力化のために技能チャレンジが用意されているのではと思い至る。
 省力化というのは、たとえばシティ・アドベンチャーにおける情報収集は、以前だったら数ページ分に記された、街やNPCの背景情報を使うこともあったと思うが、それを抽象処理する書式で書けるようになったということ。
 “壱”とか書いているけど続かなかった。

 ようやく一段落ついたので、少しずつ再開。
 まずは技能チャレンジってそもそもなんなのよ、ってはなしと4版での技能判定の意味について確認します。

技能チャレンジ(Skill Challenge)とは?

 4版で導入された非戦闘遭遇を解決するための処理方法というか手順。
 4版では遭遇を戦闘遭遇と非戦闘遭遇に分けて考えている。
 この分け方自体は3.5末期あたりに明確に意識されるようになった。(「鬼哭き穴〜」における冒険の書式など)。もちろんこの二者の区分はわりと流動的なものである。NPCとの交渉(非戦闘遭遇)が決裂してすぐに戦闘に移行する事もあったし、効率的な戦闘(待ち伏せなど)を行なうために、非戦闘遭遇で準備を整えるようなこともあった。
 3.5版以前で非戦闘遭遇と戦闘遭遇との目に見える顕著な差といえば、遭遇自体をどのように解決してゆくかという枠組みがルールで示されているかいなかったか、である。
 別に難しい話と言うわけではない。
 戦闘遭遇には、遭遇距離、不意討ちの有無、イニシアチブの決定、そしてラウンド毎に各人がターンを経てゆくと言う解決手順が示されていた。PCの持つ問題解決能力はこの解決手順の各段階で効果を発揮するものだった。
 それに比べると非戦闘遭遇の解決手順は緩やかであった。個々の行動(技能判定のやり方など)について判定を行なう時、個々の成否についてはそのルールに従うのみで、個々の試みを総合し、結果が全体としてどのような状況になるか、どのような展開がなされるかについては、実のところDMの判断や冒険シナリオ中の文脈に従うことになっていた。さらに言うならば、技能判定によらず適切なロールプレイやアイデアが状況を決定づけることも良くあった(そしてそれが醍醐味でもあったのだ)。
 たとえて言うなら、3.5版以前の非戦闘遭遇は命中判定のルール(技能判定と難易度)はあるものの、対象(解決すべき問題)のhpの決め方、イニシアチブや判定手順をどうするかが明確に決まってない戦闘ルールのようなものだった。
 
 その大きな要因は、一回の判定や行動(技能判定なり適切なRP)のもたらす結果が、必ずしも一定の度合いの効果をもたらすわけではないと言うところにある。ロングソードなら1d8のダメージを与える。だが、〈交渉〉の判定が成功したら、どれだけ目の前の難関を突破できるのか? 達成した難易度が高ければ、それだけ良い効果が得られるのだろうか? 
 目の前の難関がどれだけ大変で、どう取り組めばいいのか。
 
 これまでそれは、
 1)DMの情報を元に“困難”の度合いを見積もる。
 2)技能や呪文、特殊能力の効果を鑑みて、どれだけ“困難”に立ち向かえるかを予想、判断する。
 3)アクションを通じて、“困難”をどれだけ達成できているかを見計らいつつ、次の行動を決定、実行する。
 という流れでだった。
 これ、慣れるまでは結構大変である。
 まず、1)で困難の度合いを見積もるのが大変だ。ある程度慣れたり、DMとの馴染みが深いならだいたいの所を予想できるだろうが、そうでない場合には次の2)立ち向かえるかを予想・判断する、を行ないつつ困難の全貌を把握するという作業になる。これには、自分のキャラクターがどれくらいのことができるか、〈跳躍〉判定で難易度25までクリアできればどれだけの距離が飛べるか、〈交渉〉ではどのようなことができるのか、と言ったこともわかってないといけない。
 そして、個々の行動の成功が全体の困難をどれだけ突破しているのかについても、DMとの質疑応答、キャラの能力が保証する達成度合いを元に判断する事になる。
 
 じつのところ、これに悩むのは最初の数回と言う話もある。ある程度セッションを積むとDMとの相互理解が進み、自分のキャラクターの性能も把握できて非戦闘遭遇をこなせるようになる。が、問題が出てくるのは他のプレイグループのDMやコンベンションのDMなどとのゲームだ。
 コンベンションでダンジョンものが多いのは、アイデアやDMの対応で差が出る非戦闘遭遇を極力廃し、一定水準の冒険を提供できるからである。加えて、非戦闘遭遇はPLの取りうる選択肢が膨大であり、それらに対応する記述を書いていくと多くなってしまう(しかもその記述は使われないことも多い)。
 
 技能チャレンジはこれまで非戦闘遭遇が抱えていた、このような「枠組みが存在しない」こと「対応すべきことが幅広い」こと、それから導かれる「仕組みを記述で対応しきれない」ことに対応すべくデザインされた、「非戦闘遭遇の処理方法」である。実を言えば4版ならではのシステムというわけではない。というより、3.X版はおろかD&D以外のゲームにも応用できる、戦闘以外の解決を処理する手法である。
 
 仕組みを説明しよう。『ダンジョン・マスターズ・ガイド』が手元にある方はP.72からを読んでもらえれば良いのでそちらを参照。
 
 技能チャレンジを簡単にまとめると、「目標を達成するために複数回の技能判定を行ない、3回失敗する前に、一定回数の成功を収める」という処理になる。
 
 個々の技能判定の難しさはおもにその技能チャレンジの“レベル”により設定される。そして、総合しての難しさは”複雑度”という「必要とされる成功回数」によって決まる。複雑度は1〜5まであり、複雑度1の技能チャレンジは遭遇において同レベルの標準モンスター1体と同じ経験点を有する。複雑度1は成功数4,2は6……5は12となる。
 技能判定の難易度については、『ダンジョン・マスターズ・ガイド』P.42にあるレベル別難易度の表を主に使うことになる。
 
 ちなみに言っておくと4版においては、だいたいその分野の訓練を積んでいて(+5のボーナスが得られて)、秀でた能力値(ボーナスが+4あたり)があれば、出目1でも“通常”の難易度は達成できる。対抗ロールやよっぽどのことを行なうのでない限り、技能判定は訓練を受けていれば基本的に成功するものなのである。出目10を行える状況なら、難易度20も容易にクリアできることが多い。
 これが端的に現れているのが〈盗賊〉技能の解錠判定であり、1〜10の間は難易度20、11〜20は難易度30、21〜30は難易度35となる。先ほど書いたとおり、1レベルでもちゃんと作ったローグ系なら〈盗賊〉技能の修正値は+8〜10は堅く、〈盗賊〉道具を使えばさらに+2のボーナスが乗る。よって、適切な訓練を受けた冒険者は落ち着いた環境下(出目10OK)では確実に錠前が外せる。何回も試行できる(結果的に出目20ができる)環境下なら1レベルのローグが11レベルあたりに出てくる錠前を開けることもできる。
 つまり、4版においてはカギを開けるというのはもはやドラマとなるシーンではないのだ。4版で単なるカギを開けるのがドラマチックになり、遭遇の一部として意味ある判定になるには、出目10ができず、しかも失敗にペナルティがあったり、そもそも試行にペナルティを科せられている状況である必要がある。
 重ねて言う。4版では単にカギを開けたりする事がローグの仕事ではない。敵が襲ってきたり、後から岩が転がってきてるようなとんでもない状況で迅速・確実にカギを開けるのがローグの仕事なのである。
 
 技能チャレンジも基本的に成功を重ねて行くものであり、失敗するのはそもそも試みに無理があったか、やっちゃいけないことをしたか、だれも適切な技能を持っておらずむりくり試みる羽目に陥ったか、である。
 バランスのとれたパーティが、適切な技能選択をしていけば、おおよそ成功する。これは高難易度の技能判定を何とかクリアして成功を重ねて行く、という代物ではないようなのだ。すくなくとも、現段階の技能チャレンジの例等を見ているとそれが伺える気がする。

短期間の技能チャレンジと長期間の技能チャレンジは別。

 DMGを読んでいればわかるとおり4thの技能チャレンジは二つのタイプがある。
 1つは通常の戦闘ラウンド内に導入される短期間の技能チャレンジ。DMGの罠の説明を読んでもらえばわかるとおり、4thの罠はその多くが罠単体としてではなく、罠とそれを地形要素として利用する敵という一つの遭遇としてされる時にもっともおもしろくなる。
 罠単体でごろっと一つあっておもしろい遭遇と言う場合、それはただの落とし穴や爆弾や宝箱の罠ではなく、ダンジョンの一区画を使った罠遭遇となる。これはこれであり。
 戦闘遭遇の間に、振り子ギロチンが毎ラウンドランダムに攻撃してきたり、アンデッド部屋で毒ガス巻かれたり、非実体モンスターが居るところで吊り天井などが4thのトラップが光るところ。つまり、戦闘中に各種技能をもったキャラクターが技能チャレンジを行なわなければならない、そう言う状況が楽しい。
 考えて見て欲しい、PHBで考えるならこれらの罠を外すことができるのは撃破役のローグとウォーロック、重要なダメージディーラーが、すくなくとも4rは罠に対処するために戦闘に参加できないってことになるのだ。他の人間がそのあいだ敵を食い止めたり、一瞬だけローグがダガー投げたり、するわけだ。
 この技能チャレンジはただやるだけで楽しい(3月のHJコン、ラスト遭遇あたりはこれを意識しました)。さらにチャレンジ失敗して罠が爆発とかしたりするともっと楽しい。
 重ねて言うが、この手の「短期間の技能チャレンジ」については運用のノウハウはたぶんほとんど必要ない。文章が改正される前のDMGに乗ってた処理はこの「戦闘ラウンド中に処理する形の技能チャレンジ」について書いてた模様。

長期間の技能チャレンジ

 これ。
「3回失敗するまでに、一定回数の成功を積み重ねる」。書き出せばそれだけの処理なのだけど、それなら該当する技能について一番高いキャラクターが何回も成功すれば良いだけで、試行回数や失敗リスク他について決めてないとホント単なる作業だし、エラッタ適用後はリスクと言えるほどの失敗率もないし……。正直困る。
 しょうがないのでDMGに記された技能チャレンジのサンプル(あそこに乗っているのはすべて”長期間の技能チャレンジ”である)を見たり、WoCのWeb記事(http://www.wizards.com/default.asp?x=dnd/drfe/20081107)で確認してわかったことがある。
 以下は該当記事一部まとめ:恣意的な解釈を否めないので原文当たるが吉
 1:「技能チャレンジと戦闘は似ている。DMである君とプレイヤー、双方がそのチャレンジを望んだ時にもっとも良く機能する」
 例:橋を渡らねばならないがそこにはトロルが居る。戦わねばならない。
 PL側が潜行や贈賄でことを何とかしようというのでない限り、この例で戦闘は不可避に思える。しかし、慣れたDMであれば、このときパーティの思いついた計画を実行させるのが何よりの妙手と知っているはずだ。確かに戦闘しても良いけど、PLがアイデアを思いつき、そしていくらか出目で20を出して波に乗っているなら戦闘にこだわる必要は無い。素早く決断し、アイデアに報いよう。
 技能チャレンジの処理も同様だ。
 真に優れたアイデアがあり、君の用意したチャレンジがそれで簡単に突破されたらどうするか。
 悩まずゆけよ、ゆけばわかるさ。D&Dは創造性と想像力のゲームだ。
 ただ一つの確定下海法しかないのだとしたら、一体何が楽しいのか。
 技能チャレンジを作る際に留意するのは、PC達が(君の用意したものに対して)まったく別の展開、アプローチを行なうことや、チャレンジそのものに失敗した時のことも考えて置こう……。
 
 技能チャレンジの説明の初っぱなにこんなこと書かれても気はするが。
 勘違いしがちなのは、技能チャレンジというのは確かに冒険の障害、遭遇を形作る障害物として見えることが多い。成功回数などについて記されているから、そうしたゲンミツな処理を行なわなければ“ならない”手続きに見えるけど、実際はそうではないという所だろう。

 これ、ちょっと別記する。

WoCの記事を順次訳そうと思っていたのだけど止まっている。まぁ、ある程度は「よくわかる本II」にまとめたから……。

技能チャレンジについての誤解

このあたりで、技能チャレンジというのが熟練DMがアドリブなどで処理していたフリースタイルな非戦闘遭遇をなんとか定量化しようとする試みなんではないかと思い至る。

 というか、このあたりWoCのデザイナ陣もどれだけ自覚的か怪しいものだけど。
 と言うよりも、非戦闘遭遇をどのようにゲーム的に処理するか、それをおもしろく、かつわかりやすくするか、と言うことについてガンドッグのTRSやAマホが先行き過ぎてるンじゃないかという気もする。
 
 ここで言及するのは”長期間の技能チャレンジ”ね。
 海燕のリプレイで言うなら、隠された港を捜すために洞窟網を抜けるために行なってた技能チャレンジ。
 
 技能チャレンジというのは、非戦闘遭遇をシステム的に解決するための新ルールではない。まず、このことを改めて認識しておこう。
 むしろ、技能チャレンジとその表現書式(WoCのDLシナリオやモンスター本で頻出)と言うのは、これまで手慣れたマスターが各々のセンスや背景世界のシミュレートから導き出していた、「非戦闘遭遇の対応方法」を何とか要素に分解して、まったくマスタリング経験がない人にもわかるように示そうとした、「泳ぎ方/投げ方/走り方、の分解写真」みたいなものなのである。
 
 やはり自分の書いたものを例に出そう。
 若獅子の戦賦、監獄島編、監獄島へのアプローチの場面である。
 
 あそこはDMとしては監獄島へどのような形を取って進入してもらっても構わなかった。監獄島の地理的データ的準備はしてあるし、トーチ・ポートの設定もある。あそこで僕がしていたことは、PL陣のアイデアを聞いて、それに対して難易度を示したり、NPCによる対応を返すということだ。
 これ、たぶん、初めてのマスターは戸惑うはずだ。確かに、難易度などはルールブックに従えば算出できる。NPCについても出すことは簡単だろう。しかし、PL側から提案されたアイデアに対して、それがどの程度歯ごたえあるものなのか、どれくらいのやりとりで目的地に到達すべきなのか。その遭遇でPCたちがどれだけの問題に対処しなければならないのか。それを判断するのが大変なのだ。
 
 実のところ、対処すべき困難はいくらでも細分化できる。これは、DMがその冒険の主眼をどこに置くかで、状況に対するズームアップ率が変わってくるというのもある。“難攻不落の監獄島に進入する”というのが冒険の主目的であった場合、侵入に成功するまで立ちはだかる困難は数多く多彩なものとなるだろう。一方、侵入した先の出来事に重きが置かれるなら、監獄島への侵入は幾つかある障害の一つにとどまるだろう。つまり、前者では要求される技能判定の回数は多くなるだろうし、後者では少なくなる。
 多くのマスターはこのあたりをたぶん、思いつく障害の数をリストアップしたり、いくつものルートを前もって想定して、それぞれに対してメモを残しておく。甲羅を経たマスターだと、このあたりの基本的なやりとりについては過去の経験があるから、特例事項についてのみメモを記しておけばいい。そして、その過程でどのくらいの歯ごたえにするかを決めてしまっている。
 
 でも初心者マスターにはどれだけのことをして良いか、その見当がつかない。
 だから、技能チャレンジなのである。
 
 技能チャレンジの書式は、手慣れたマスターが非戦闘遭遇を行なう時の覚え書きである。どの技能がどのように有効で、成功に数えるのはどのような成功で、そしてだいたいどれくらい成功したらこの非戦闘遭遇をこなしたと見なすか。
 慣れたマスターであれば、実のところ技能チャレンジは必要ない。技能チャレンジで示された課題を、PLの前にいきいきと描写し、彼らから適切なアイデアを引き出したり、驚かされたりして上手いことその遭遇を勧めることができるはずだ。そしてたぶんその進行で何ら問題はない。
 
#時々魔法のアイテムとかで技能チャレンジにおいて、パワーを使って成功した時、成功カウントを2稼げるとかしたものがあるので、そこは上手く対応しよう。
 
 ただし、そのやり方は慣れたマスターが行えるやり方で、そのやり方をなんとか記録しようとシティものや捜索ものの冒険シナリオでは苦心していた。結局の所、冒険の背景情報や地理的情報、NPC情報などを備えて、「PL側の動きを準備の厚みで押し切る」という表記方法になっていたというのが過去、3.5版時代のDungon誌などをみた感想になる。
 技能チャレンジはこうした流れの中で、非戦闘遭遇を書式に落とし込み、処理を定めて初めてのマスターに対して、“戦闘を処理するように、非戦闘遭遇を処理する”ための”形”として準備されているというのが、僕の意見である。
 
 戦闘中のパワーのやりとりをフレーバーテ・キストに沿って演出してゆくように、積み重ねる技能判定をPLとDMでふくらませてゆくことで非戦闘遭遇の遊び方を身につけ、やがてこの”形稽古”から離れてゆく、そのための書式なんじゃないだろうか、とも思う。いや、これはちょっと筆が滑ってる気がするけど。
 
 じゃあ、この技能チャレンジって慣れたマスターには必要ないの? って疑問も出るかと思う。
 たぶん、必要ない。これまで通りのやり方で遊ぶことに、すくなくともこの長期的な技能チャレンジは必要ない。と言うよりも、皆さんなら普通に遊んでこの技能チャレンジが目指そうとしたものは実現できるはずだ。
 けど、あるととても便利な道具でもある。
 
 非戦闘遭遇の大変さを記述するための定量的な方法ってこれまでなかったからだ。そして、それを経験点に表記する定量的な方法もなかったからだ。
 が、今回はそれができる。
 かなり乱暴な気はするけど、成功回数12回と成功回数4回という差で困難の度合いは表現できる。
 
 それと、たぶん技能チャレンジを扱ったDMの皆さんなら気がついているかも知れないけど。技能チャレンジというやり方はとくにD&Dに慣れてない人やRPGに慣れていない人でも、事態の解決に積極的なアイデアを出しやすい。ようだ。
 この辺は伝聞+自分の経験のみなので何とも言えないのだけど。
 3.5などでは個々の技能について何ができるかできないかがとてもゲンミツに決まっていて、その技能の効果を把握していないと「〜してみる」と言うのが言い出しにくかった、らしい(嫁談)。
 今回の技能チャレンジなら、難易度がこれくらいで、いろいろアイデア出してくれれば他の技能でも対応すると伝えてあるせいか、まずは積極的にアイデアを出す方に頭が働くようだ。結果として、戦闘以外でのアクションを提案することが多くなり、セッションがとても多彩なものになる。
 
 僕はこれだけでも技能チャレンジというのはなかなか良い、“形”じゃないかと思っている。
 
 それはそれとして、デザインの仕方とか、ここの技能の処理方法とかがもうすこしまとまっていればもっと使い良いとは思うけどね! というか、DMG2にはこの辺の例題がたくさんまとまってて欲しいものだ。

 あらためて今、通して読み直してみると、途中で技能チャレンジについての理解が右往左往している。
 非戦闘遭遇をシステマティックに扱うには、正直穴だらけだなぁという印象があったのでいろいろ読み方を考えた結果、いまは最後の「フリースタイルな非戦闘遭遇をなんとか定量化しよう」としたものであるというのに落ち着いている。
 が、その上でもう少しギミックを盛り込めないか、とか。

 これ、「違うんじゃないか」と思ったのはコンベンションでのことで。
 技能チャレンジの各技能について説明していると、長い上に聞いている方はわすれるのよね。当然ながら。
 遊びやすさのことを考えて使用技能を完全公開してたんだけど、どうもその方が面倒くさい。
 これなら、導入や情景描写から一つ二つの技能を示して、そこからはアイデアを汲み取りつつ“適宜行なう”(もう少しうまい言い方無いものか)方がスムーズではないだろうか。技能チャレンジという枠組みをかっちりと明示しない方が良いんではなかんべか、等と考えたのである。
 これ、ちょっと実践不足なので、まだ、これといった結論は出てないんだけど。

D&D第4版がよくわかる本II (ダンジョンズ&ドラゴンズ)

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