帰省
そいえば、先週は実家に帰っておりました。
D16の実家は割と有名な温泉地+スキー場なのです。小学校の頃には冬場の体育の時間はすべてスキーになっておりました。したがって、鈍い自分でもスキーだけは人並み以上にすべることができるようになりました。
小学校は中学校と併設で、僕がいた頃には小中合わせて生徒数が100人程度。一学年が10人くらい。思えば、この小学校の4〜5年生の時にS・ジャクソンのソーサリーを手に取って僕の人生が大きく変わるわけですが、それはさておき。
実家に戻るたびになんとなく散歩がてらに校舎を眺めたりしていました。で、今回は珍しく平日の夕方、昔の通学路を通ってなつかしの校舎に行ってみたわけです。いつもは人を見ることが無かったんですが今回はまだ生徒がいて、そして校舎に明かりがともっていました。
もう20年以上たつのに校舎はまったく昔のままで、夕方窓から漏れてくる蛍光灯の明かりと漏れ聞こえてくるざわめきすら昔のままで。
ここはもう自分がどうこうする場所ではないんだよな。そうわかっていながらも、あまりにも昔のままの校舎にふとうろたえてしまって。
職務質問受けました。
いや、当然ですよね。不審者丸出しですもの。
OBだって話したら職員室に招かれました(もしかしたら本気で身元確認するつもりだったのかもしれません)。で、言葉に甘えて昇降口から、廊下へ。
ほんとに昔のままでやんの。つか、ジャージくらい新しいデザインにしてあげなよ、もう。
田舎のいいところで、地元の話や自分の父の店の話とかしたらすぐに信用してもらえました。
もう、小学校はすべての学年が複式学級だということ。小中合わせて60人行かないって言うこと。相変わらず給食は学校で作っているって言うことetc, etc。
で、ちょっとお願いをして、図書室に入れてもらいました。
僕の基本を形作ったのがあきらかにここの図書室の江戸川乱歩やヴェルヌ、コナン・ドイルだったのでなんとなく確認する想いで。
昔と変わらず、人数に比してえらく充実した図書室なのです。梨木果歩さんとか恩田陸あたりも置いてあるし。
で、書架を巡るうちに見つけたのです。
大好きだった本を。
手にとって、なんと無しに裏表紙を開いてみたら、そこに貸し出しカードがあって。
小学生の僕の字で、名前が書いてありました。
三回も。
本の題名はヴェルヌの『神秘の島』。
漂流モノと呼べるジャンルがあるなら、その最高傑作。気球で無人島に不時着した科学者と技師たちが、科学技術と創意工夫と不屈の意志で生き抜いてゆく冒険小説。
思わず片っ端から見覚えのある本を引き出してみました。
『アーサー王物語』、『西遊記』、『北欧の神話』、『ギリシャ・ローマ神話』、『海底二万マイル』。
いくつかにはまだ僕の名前が残っており、いくつかはもうあたらしい貸し出しカードになってしまっていました。
けど、やっぱり、とても嬉しくて。
帰りに、その図書カードをコピーしてもらいました。
校門を出たあと自然に一礼したのは、多分これを取っておいてくれた空間と時間とに感謝したかったからです。
あのころ、自分がこんな風になると思っていたかどうか。
帰り道、なんとなくそう考えてみて、
そして、
半ば確信めいた予感があったことを認めざるを得なくって、
今こうしてここにあることは、何も不自然なことではなく、だから今それなりに満たされているのだろうな。
そう感じました。
できれば、あの書架に残せるものを作りたい。
思いを新たに、とりあえず今の仕事をやってゆきます。