4版『プレイヤーズ・ハンドブック』発売中
12月5日発売で、皆様も各所で手に入れて居られるようですが、
D&D4版、『プレイヤーズ・ハンドブック』が店頭に並んでおります。
D&D3版というのは、AD&Dの1st、2ndに回帰する趣味がありました。この辺はデザイナーも意識的にそうしていた節があります。デザイナーの頭の中に「俺たちのあこがれたD&Dを最新のシステムで! 」というのがあったでしょう。そのせいか、3版系は過去の資産を原典を踏まえつつ現時点でのアレンジを加えてルールの作り出す宇宙観というか、世界観を形作っていきました。
翻るに、4版はそのあたりの過去のD&D文化というか文脈といったモノへの言及はあえて避けている節があります。著名キャラクターや個性的な場所(扉の街シギルやDomains of Dread、恐怖の島)などは残しながらも、それらを包括していたグレイホークなり、フォーゴットンレルムなりへの言及は最小限にとどめています。
過去のD&Dを遊んだ人は3版以上に4版に戸惑うでしょう。共通しているのは6つの能力値とAC、そして20面を主に使うと言うことくらい。何度もネタにして恐縮ですがマジック・ミサイルは命中判定が必要な代わり[無限回]に使えるし、クレリックはキュアしながら殴ります。
プレートメイルはパラディンの物になり(ファイターが初期習熟しているのはスケールメイルまで)、ローグはいまや最前線遊撃兵です。そして、ウィザードは決定的に火力担当から戦況操作担当にシフトしました。もう20d6のファイアーボール(クラシック当時)は撃てません。
その代わり、基本のルールはすっきりと見通しのよいものになり、飲み込んでセッションを運営するまでの時間は短くなりました。また、プレイ内でも「準備に要する時間」は短くなり、データのチェックに費やされていた時間はその分戦闘や、ロールプレイ、作戦検討の時間に廻すことができるようになりました。
3版は偉大なゲームでした。コア環境でいうならまだ充分、それどころかこれからしばらくの間も現役を張れるシステムです。ただ、サプリメントなどでふくれあがったD&Dの「ゲーム環境」は、これからゲームを始めようとする人には重くなっていたのも事実です(んなもん気にせず、手元のシステムで遊べばいいじゃねーか。とは思いますが)。
4版は、新しいゲームです。
過去の版への言及や過去のしがらみといったものから、いったんその身を切り離し、「何がD&Dだったのか」という所に立ち返ったゲームです。
そして出した回答は、「リアリティにこだわるよりも、遊んでおもしろいか否か」を重視した舞台で、「パーティ内で連携しつつ」、「危難を冒険技術で切り抜け」、「いかにおもしろくモンスターと戦闘し」、「魅力的な宝物を得るか」という、根本的なものでした。いろんな選択肢があって、いろんなことができて、その上で過去の伝統に基づいていた3版。それをいったん切り捨て立ち返ったところは、呆れるくらいに単純な、下手をすれば退歩とも受け取れるコンセプトです。
賭けてもいいんですが、3版、3.5版を遊んでいた人が4版を手に取った時、一番戸惑うのはぱっと見「できることが大幅に減った」という印象でしょう。ええそうです、武器落としも足払いも一般の戦闘ルールからは除外されています。それらの戦闘技術を行なうにはクラス毎に用意されているパワーを取得せねばなりません。
しかし、一方で各クラスのできることがパワーという形で、明確に表わされ、個別のルールを知らずとも、「らしい」行動がとれるようになったとも言えます。3版でトリッパー(足払いをメインに据えた戦士)を遊ぶには、
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- 必要とする特技。
- 戦闘における足払いのルール。
- それらを可能にするキャラクター・ビルドの方法論
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を知らないと(厳密には)難しかったのですが、4版ではとりあえずファイターがスピニング・スィープのパワーを取っておけばトリッパーができます。
キャラクターを構築することは楽しい。間違いない。
けれど、4版ではそこよりも「キャラでスムーズに冒険すること、運用すること」に楽しみを置いているように僕には思えます。
「まずは冒険したかったんだろう? なら、キャラの操作に慣熟する時間がもったいないじゃないか」
こんなデザイナーの言葉が聞こえてくる気がするのです。*1
3版から遊んでいる人で、新しいD&Dに興味を持っているひと。
4版はお勧めです。3版と4版の差から、デザイナー達が4版で見いだそうとしているD&D像を見ることができるでしょう。
3版を遊んでいる人で、まだ乗り換えに戸惑っているひと。
僕(翻訳チーム)がこんなこといっちゃっていいのか知らんと思いますが、急いで乗り換える必要はないと思います。D&D3版はすばらしいゲームですし、日本での翻訳資源があれば充分にこのさき遊んで行けます。プレイグループでも継続して遊んでゆく所は多いでしょう。僕自身もまだやり残したことがありますし。
D&Dに興味があったけど、なかなか機会がなかったひと。
4版はあなたのためのゲームです。始めやすく、すべてのルールが遊びやすさという視点でブラッシュアップされています。誇張抜きで、はじめてRPGを遊ぶ人に勧めても良いと僕は思っています。
まだ、どんなものか判断がつきかねるという人。
僕の記事をお待ちください。
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ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック)
- 作者: ロブハインソー,アンディコリンズ,ジェームズワイアット,桂令夫,岡田伸,北島靖巳,楯野恒雪,塚田与志也,柳田真坂樹
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2008/12/05
- メディア: 大型本
- 購入: 6人 クリック: 59回
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*1:つーか、この辺の話ってマニュアル車とオートマ車の好みに通じるものがあるよね。▼移動手段として考えるなら、オートマ車で十分だけど車を操作する楽しみという点でマニュアル車が好きって人がいるのも理解できます。3版と4版ってそんなスタンス差があると思うのですよ。▼で、いままでマニュアル車的なところで(すくなくとも日本国内では)他と差異を突っ走ってたD&Dが満を持して出してきたのがオートマ車だったら、元のファンは戸惑いますよね。▼僕自身としてはD&Dと言うのはシステムの名ではなくコミュニティの名と思っている所があるので、ユーザー数が割れない限りはやはりD&Dにいろんな才能や発見、名作が集まってくるだろうと思っています。