卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

Aマホの感想(3)ゲームとしてのタフさ

 Aマホは口プロレスと揶揄される類のゲームでは断じて、ない。
 “製品としてのルール”なる言語で、がっちりと構築・シミュレートされるゲーム空間を“あえて”構成しないことを選択したため“ルールがスカスカ”に見えるだけだ。
 セッションの運営方式、行動宣言の判断など、厳密な手続きに基づき、「M*〜」から始まるゲームの目的をクリアしてゆく、タフなゲームである。

 以下脱線。
 さらに言うなら、D&Dヘビー・ユーザーに時たまあげつらわれる、ストーリー・エンジンやハンドアウトなどのプレイエイドを実装した国産ゲームも、
「ゲーム・ルールという言語で、特定ジャンルの物語空間を構成し、それをPL、GMの共通理解として提供しようとしている」のであり、それらをD&Dなどのゲームと同じ遊び方をしてああだこうだいうのはお門違いだろう。
 特定ジャンルのストーリーを展開させるためには、そのジャンル世界の世界則にデフォルメをかける必要がある。実のところ、戦闘は1ラウンド6秒単位で解決する一方、〈製作〉は1週間単位の20面体1回振りで解決するD&D自体がすでに、そういった「ジャンル世界を再現するための世界則デフォルメ」をしまくっている。
 “D&Dならなんでもできる”というのは幻想である。正確には“D&Dなら、D&Dが再現しようとしたジャンルはできる”というのが正しい。さらに言うなら、D&Dに手馴れたマスターがさまざまなサプリやアドヴェンチャーを読んだり、雑誌を読んで触発されてさまざまな冒険環境を再現しようとするのであり、コア3冊だけ読んだ人にとっては、やっぱりD&Dは「穴に潜って竜に食われたり殺されたりする“しかできない”ゲーム」であるだろう
 そこに多様な遊び方を例示するのが、先に遊んでた連中がやることだ。

 概念的にAマホがすげえなと思うところは以上。で、システムとしては、ターン進行、行動宣言の順番、質疑応答、行動宣言、行動判定といった手続きを、厳密なものと明確化し、そして固定した点だろう。
 そうでなければ、単に言った者勝ちで物語が発散してしまい、収束させるための介入が招かれてしまう。セッション運営形態をかっちり規定したことでそれが起きなくなっている。
 具体的にいってみよう。

 Aマホではセッション中プレイヤーがゲーム的に意味のある行動宣言を行なうことのできる回数は、他のゲームに比べて驚くほど少ない。
 
 びびるほど少ない。
 泣きたくなるほど少ない。
 
 D16が参加したセッション(404 Not Found)を例に取る。
 2ターンのゲームで、参加者4人。PLサイドで行なえる行動宣言の回数は、全員合わせて8回。ロールプレイ的なやり取りはともかく、実際にゲーム空間に働きかける行動を能動的に取れる回数が8回。
 少ないだけではない。辛い。
 セッションの難易度は120、平均して、1人1手番で120/8=15ずつ難易度を削る必要がある(ダイスに頼らず、完全に成功するには難易度の2倍の成功要素が必要なことに注意)。
 今回のPC1人が持っている成功要素は、基本10個にアイテムなどで3から5、状況により一時的に提出できるのが最大2つ、取って置きの絶技というのがあって使用したら要素5つ分(だが、1ターン1回しか使えない)。アイテムなどをフルに使えても1ターン、最高で20〜25ほどしか成功要素は提出できない。さらに、その状況に合わない成功要素は“提出”しても“抽出”されず、成功要素にカウントされない。そもそも、まったく関係のない成功要素は提出できないことを考えれば、成功要素を手番ごとに全部提出するのは困難を極める。
 状況を読み、成功要素をカウントし、自分にできることを考えなければならない。たった2回の行動宣言でその目的を達成しなければならない。
 だが、泣いてても解決しないから、泣きながらその貴重な行動宣言を吟味する。
 行動宣言の前にはその行動について質疑応答が許される。そこでSDに尋ねることで難易度の推定も行なえる。だが、質問に対しては“SDが確実に答えなければならない回数は2回、3つ目までは不確実な回答、そして4つ目以降は答えてはならない”とこれまた厳密に定められている。
 個人の問題としてだけ考えても、行動を成功させるために“何を問うか”のレベルで判断が必要だ。さらに、パーティの共有情報となることも考えればさらにその責任も重くなる。
 行動宣言も含めて、自分が自分のPCの手番に行なう質疑応答、行動宣言はパーティ全体のリソースを費やすものであり、責任が生じるものである。個々のPLの出来不出来は全体としてのミッション達成にダイレクトに影響する。
 すると、各PLが各PCの特性を良く知ったうえで、全体の物語の流れをPLサイドである程度コントロールし、各PCが自分の性能をフルに発揮しうる状況を作る必要がある。
 
 重ねて言うが、パーティ全体で8回しかない行動宣言でだ。
 
 今回のセッションでは自分は他のPLの方と意思疎通が充分とは言い難かった。ざっと見て、荒事に提出できそうな成功要素が少ないため、情報収集などを任せてもらったが、個人で難易度を削ることしかできていない。例えば協調行動を取ったり、荒事実行者がフルに活躍できるように状況をセッティングする行動を行なったりというのが、多分チームプレイのキモだろう。まどか(芝村さん)、藤城(氏家さん)の協調行動とかを見ているとそう思う。