卓上戦諸録(D16)

D16の卓上ゲーム記録

毘那夜迦の闘士(d20クトゥルフ)

 元のサイト(D16's Home Page)にも乗せたのだけど、こちらのほうがあちこち引っかかってくれそうなので。転載。
 
 西暦1900年、西チベットに単身潜入した僧、河口慧海は著書『西蔵旅行記』に、この奇妙かつおぞましい祭礼に遭遇したいきさつを簡潔に記している。単なる原住民によるチベット相撲と書かれた内容に関してはほとんど誰も注意を払わなかった。
 1945年慧海師の死去に伴い、遺稿の整理がなされたとき初めて、当時の手帳が発見されその相撲の内容が明らかにされたが、常人の理解に及ぶ内容でなかった。この時期の手帳の記述は生前の慧海師を知るものからすれば常軌を逸したものであり、ちょうど高山病に深く悩まされていた時期と重なることもあり昏睡時の幻覚と判断された。故人の晩節を汚すようなことになってはならないと、この手帳は廃棄されるところであったが、これを東亜の武術に関する記述を収集していた大河内民明氏が参考にと借りてゆき、当時編纂中であった『東亜の奇拳・補遺』に件の相撲に関する記述のみ(それ以外の記述に関しては慧海師の親族から伏せるようにと強く要望があったのだろう)が掲載された。

 しかし、当時の東京大空襲に際して民明書房の倉庫、および原稿も手帳も喪失してしまい、焼失を免れた数部の『東亜の奇拳・補遺』にのみ毘那夜迦(びなやか)の闘士の記述がある。

 なお、焼失を免れた後もこの書籍は持ち主が相次いで死亡したり、盗難にあっているという。

 断片的に伝えられる内容によると、毘那夜迦とは現在仏教において聖天として祭られている、古代インドの象面人身の鬼神ガネーシャの異相の漢訳であり、毘那夜迦の闘士とはこの毘那夜迦の前で奉納のチベット相撲をおこなった力士の事を指す。相撲とはいえ、古代の日本で行なわれたような当身のある激しいものであったということが、同時期の旅行の記述より見て取れる。毘那夜迦はもともと摩羅醯羅列王(まらけいられつおう)という魔物であり、伝承によると牛と大根を好み、牛がいなくなると死人の肉、生者の肉を望んだという。おそらく慧海師は古い形でのガネーシャ信仰を目撃したのであろう。



 “毘那夜迦の闘士”上級クラスは、その名前に反してヒンドゥの伝統にはなんら関係の無い上級クラスである。“丘よりきたる恐怖チャウグナー・フォーン”に献身的に仕えるチョー・チョー人の闘士により編み出されたその名をはばかる技術は、チベット相撲、タイ式古式拳法の技法を取り込みつつも、素手で迫害者を殺戮し、生贄を不浄なる主に捧げるために、超自然的かつ冒涜的な崇拝と徒手での格闘技術を魔術的なレベルで統合したのである。

 この技術を修めるものは次第に、主への同調を高めて行き、いずれは主そのものに乳を授けるコンパニオンの域に到達することがかなうという。おぞましく、不埒な技法の体系である。

 ヒット・ダイスの種類:d8。

必要条件


 毘那夜迦の闘士になるためには、キャラクターは以下の基準すべてを満たさなければならない。

 基本攻撃ボーナス:+6以上

 技能:〈外国語:チベット語〉5ランク、〈軽業〉9ランク、〈クトゥルフ神話〉5ランク、〈呪文学〉9ランク、〈精神集中〉9ランク。

 特技:《回避》、《持久力》、《マーシャルアーツ》。

 呪文:コンタクト・チャウグナー・フォーン

クラス技能


 毘那夜迦の闘士のクラス技能(と各技能の対応能力)は、〈隠れ身〉【敏】、〈軽業〉【敏】、〈聞き耳〉【判】、〈視認〉【判】、〈忍び足〉【判】、〈呪文学〉【知】、〈精神集中〉【耐】、〈脱出術〉【敏】、〈知識:オカルト〉【知】、〈跳躍〉【筋】、〈登攀〉【筋】、〈平衡感覚〉【敏】。

 レベルごとの技能ポイント:6+【知】修正値。



































レベル基本攻撃ボーナス頑健セーヴ反応セーヴ意志セーヴ特殊
1+1±0+2±0素手ダメージ増加、連打
2+2±0+3±0立ち上がる恐怖、直感回避、呪文獲得(サモン・レッサー・ブラザー・オブ・チャウグナー・フォーン)
3+3+1+3+1目を開く恐怖
4+3+1+4+1足を踏み出す恐怖、呪文獲得(サモン・ブラザー・オブ・チャウグナー・フォーン)
5+4+1+4+1鉤爪を剥く恐怖、身かわし
6+5+2+5+2捕らえる恐怖、直感回避強化
7+6+2+5+2のたうつ鼻の恐怖、呪文獲得(ラック)
8+6+2+6+2掲げられた左手の恐怖
9+7+3+6+3引き抜かれた右手の恐怖
10+8+3 +7+3丘より来る恐怖

*……新たなレベルに上昇する際には、獲得しようとする毘那夜迦の闘士上級クラスのクラスレベルに等しいポイントの正気度を失う。つまり、初めて毘那夜迦の闘士上級クラスを得るときには1ポイント、闘士クラス7レベルになる際には7ポイントというように。正気度喪失による影響はすべて適用される。

クラスの特徴



 以下のすべてが毘那夜迦の闘士上級クラスの特徴である。

 武器と防具の習熟:毘那夜迦の闘士は近接武器に習熟している。また、以下の武器を用いているときは連打能力を使って攻撃することができる。すべてのナイフ、ククリ、手斧、ヌンチャク、クラブ。毘那夜迦の闘士はいかなる防具にも習熟していない。

 素手打撃:毘那夜迦の闘士は素手での戦闘に関する高度な訓練を積んでおり、素手でのダメージが通常の1d4から1d6に増大する(闘士のクラスレベルが5レベル時には1d8に増加する)。この攻撃は両方の拳を交互に使っても、肘、膝、足を用いても構わない。つまり、闘士は両手がふさがっていても素手打撃を行なうことができるということだ。

 人工的武器や肉体武器を強化したり性能を向上させる呪文や効果(マジック・ファングマジック・ウェポンの呪文など)に対して、闘士の素手打撃は人工的武器であると同時に肉体武器でもあるものとして扱う。

 連打(変則):鎧を着用していない時、闘士は正確さを犠牲にして連打攻撃を行なうことができる。その場合、1ラウンドに1回、一番高い基本攻撃ボーナスを用いて追加攻撃を行なうことができる。ただし、その追加攻撃および、そのラウンドに行なうすべての攻撃に−2のペナルティが課される。このペナルティは1ラウンドの間持続するので、闘士が次のアクションを行なう前に機会攻撃が発生した場合、それに対しても適用される。連打攻撃を行なう場合、モンクは全力攻撃アクション(P.###)を行なわねばならない。

 連打は、素手攻撃またはすべてのナイフ、ククリ、手斧、ヌンチャクを用いた攻撃でしか行なうことができない。闘士は素手攻撃とそれらの特別な武器での攻撃を好きなように組み合わせることができる。たとえば、5レベル攻勢キャラクター/3レベル・毘那夜迦の闘士のジャーは(基本攻撃ボーナス+7)、攻撃ボーナス+5で素手攻撃を1回、攻撃ボーナス+5でククリやヌンチャクでの攻撃を1回行なうことができる。連打の一部をなす攻撃に、特別な武器としてあげられていない武器を用いることはできない。

 立ち上がる恐怖(変則):闘士は現次元から立ち上がり異次元をのぞきこみ、宇宙的直感に目覚めた。もう二度と安住に座り続けることはできない。

 恒久的に【判断力】を2ポイント失うが、宇宙的直感によりすべてのセーヴに+1の洞察ボーナスを得る。

 直感回避(変則):闘士はまだ気付いてもいないうちから危険に対処するという、通常なら不可能な行為を可能にする、直感回避の能力を獲得する。彼は立ちすくみ状態なったり、不可視状態の敵に攻撃されたりしても、ACへの【敏捷力】ボーナス(あれば)を失わない。とはいえ、動けない状態になれば、やはりACへの【敏捷力】ボーナスは失われてしまう。

 闘士がすでに他のクラスで直感回避を獲得していた場合、彼は直感回避の代わりに“直感回避強化”(後述)を自動的に獲得する。

 呪文獲得(変則):闘士は、不浄なるものへの献身、忌まわしき儀式により秘儀書を読むことなしに、呪文を習得できる。秘儀書解読のための時間や正気度の喪失なしに呪文を獲得できるのである(使用にあたって消費する正気度、能力値は通常通り消費される)。闘士は2レベル時にサモン・レッサー・ブラザー・オブ・チャウグナー・フォーン、4レベル時にサモン・ブラザー・オブ・チャウグナー・フォーン、7レベル時にラックを獲得する。

 目を開く恐怖(超常):彫像の目が開く。闘士の目はすでにこの世界を見ていない。

 闘士は夜目を獲得する。

 また、1日に1回トゥルー・ストライクを擬似呪文能力として使用できる。擬似呪文能力は音声、物質、動作の各要素を必要としないが、コストは要素には含まれないため、この能力の使用に当たっては能力値ダメージをこうむることに注意。

 足を踏み出す恐怖(変則):闘士の意識と肉体は異質なるものへついに一歩踏み出した。もう戻ることはできない。

 闘士は見るものに超越した(もしくは人間とは思えないほど卑しい)という印象を与える。神話クリーチャー以外の存在に対しての〈交渉〉、〈動物共感〉、〈動物使い〉、〈はったり〉に−4のペナルティを受ける。

 鉤爪を剥く恐怖(変則):闘士は立った、世界の虚偽を剥ぎ取るときが来た。

 闘士の素手打撃のダメージは1d6から1d8に増加し、ダメージ減少を克服する際には+1の魔法の武器とみなす。

 身かわし(変則):一方肉体と意識の連携は異常に亢進し、闘士は身かわしの能力を得る。

 闘士は、超人的な身のこなしにより、魔法の攻撃や尋常ならざる攻撃さえ回避できるようになる。普通なら反応セーヴに成功することでダメージを半減できる攻撃(クトゥグァの爆炎やフィスト・オブ・ヨグ・ソトースなど)の対象となった場合、闘士はセーヴィング・スローに成功すればダメージをまったく受けずにすむ。身かわし能力は、闘士が鎧を着用していない時にのみ使用できる。無防備状態(気絶状態や麻痺状態など)の闘士は、身かわし能力の利益を得ることはできない。

 捕らえる恐怖(変則):鉤爪は敵を捕らえた。脆弱な宇宙を捕まえた。ずたずたに切り裂くのだ。

 闘士は二回の攻撃を命中させた相手をさらにかきむしる能力を得る。そのラウンドに2回以上、相手に命中を与えた闘士は、相手の体に爪を食いこませ、肉を引き裂く。この攻撃は自動的に2d8+【筋】修正値の1.5倍のポイントの追加ダメージを及ぼす。

 直感回避強化(変則):クラス・レベル6レベル以降、毘那夜迦の闘士は挟撃されなくなる。彼は自分を挟み撃ちにしている複数の敵からの攻撃を、まるで1対1で戦っているかのように易々とさばくことができるようになるのだ。この能力を持つ闘士に対して、挟撃による急所攻撃を行なうことはできない。ただし、急所攻撃を行なうクラスのクラス・レベルが、目標の毘那夜迦の闘士上級クラス・レベルより4以上高い場合、相手は挟撃(および急所攻撃)を行なうことができる。

 他のクラス(バーバリアンやローグなど)で得た直感回避(前述)の代わりとして自動的に直感回避強化を獲得したキャラクターは、相手に挟撃され得るかどうかを判断する際、直感回避を授けるクラスのクラス・レベルをすべて累積させることができる。

 のたうつ鼻の恐怖(超常):淫猥な長き鼻が、現実に触れて世界を萎びさせてゆく。闘士はその力をいじましいほどの規模だが模倣する。

 闘士は1日に自分のキャラクターレベル/4回、1回の全ラウンド・アクションとして、近接接触攻撃を行い、敵に触れてそこから血液と生気を吸い取ることができるようになる。 接触攻撃に成功すると、1d6ポイントの一時的【耐】ダメージ、あるいは1ポイントの永久的【耐】吸収を与える。

 掲げられた左手の恐怖(変則):ひび割れた手のひらの皮は、世界をゆがめる魔術すら遮る。

 クラス・レベル8の時点で、闘士は現在の毘那夜迦の闘士レベル+10に等しい呪文抵抗を獲得する。呪文の使い手が闘士に呪文を作用させるためには、術者レベル判定(1d20+術者レベル)でモンクの呪文抵抗以上の結果を出さねばならない。

 引き抜かれた右手の恐怖(変則):不浄なる右腕は、現実の心臓を、世界の芯を抉り取る。

 クラス・レベル9の時点で、闘士はクラッチ・オブ・ニョグタの呪文を擬似呪文能力として使用できる。擬似呪文能力は音声、物質、動作の各要素を必要としないが、コストは要素には含まれないため、この能力の使用に当たっては能力値ダメージをこうむることに注意。

 丘より来る恐怖(変則):来た、おぞましき姿が来た。大きな耳、象さながらの鼻。しかし、その類似は表面的な物に過ぎない。太鼓腹を揺らして、かの存在が来る。 クラス・レベル10の時点で、ついに技と擬似魔法的能力による肉体調整の頂点を極めた毘那夜迦の闘士は、魔法的なクリーチャーと化す。闘士はこれ以後永遠に、呪文や魔法的効果を判断する上では人型生物でなく“来訪者”(多くの場合、異次元から来るクリーチャー)として扱われるようになる。さらに、闘士は“ダメージ減少10/魔法”を得る。また、[火]への抵抗10を獲得する。その異質なたたずまいは完成し、神話クリーチャー以外の存在に対しての〈交渉〉、〈動物共感〉、〈動物使い〉、〈はったり〉に−10のペナルティを受けるが、神話クリーチャーに対しては+4の状況ボーナスを得る。

 闘士は年齢効果による能力値へのペナルティを受けなくなり、魔法的に加齢されることもなくなる。しかしながら、このレベルに達した時点ですでに受けているペナルティは、そのまま残る。年齢効果によるボーナスは得ることができる。そして、レッサー・ブラザースへと時間をかけて形質変換してゆく。


コメント:

 Webをさまよって見つけたハッタリ氏のサイトの一言に触発されて思わず作ってみた。


ninjahattari『これまであまりムエタイは好きではなかったのですが一気に取り憑かれまして。さっそくですね、チョー=チョー人のムエタイ使いが、奪われたチャウグナー=フォーン像の首をミスカトニック大学に取り戻しに来るシナリオをですね。(バカの瞳)』

D16 『初めまして、これまではROMしてましたがあまりにも楽しげなフレーズが聞こえたのでつい。「肘は触手、膝は擬足、進む道は外宇宙となる!」とかやるんですね。『卑猥なる双子の形』とか。』

 一応、d20クトゥルフ準拠。とはいえ、Modernをまじめに読んでないのでModernでの上級クラスっぽくなってないと思う。モンクとComplete ArcaneのAlienistを適当にシャッフル。バランスに関しては所詮机上空論なので、誰かテストプレイしてくださいな。

 ……いや、冗談ですよ?

 イントロはもっとそれっぽくしたかったんだが、こんなところ。民明書房は便利だけど、一気にギャグになるのが難点、か。



製作:D16(元ネタninjahattari氏)